俳句における「上る・上がる・上げる」の使い分け

「上る」「上がる」「上げる」は、俳句の中でもよく使われる言葉ですが、それぞれの意味や使い方には細かな違いがあります。
今回は、これらの言葉を正しく理解し、あなたの俳句に深みをもたらすためのポイントをご紹介します。



「上る」「上がる」「上げる」送り仮名と意味の違い

まずは、送り仮名とそれぞれの意味を確認しましょう。特に俳句では、言葉の響きや意味を正確に捉えることが大切です。

言葉   読み方  意味
上るのぼる下から上へ移動する「過程」に焦点があります。
例:山を上る、階段を上る
上がるあがる下から上へ移動し、高い場所に「到達」することに焦点があります。
例:ステージに上がる、空に上がる
上げるあげる何かを下から上へ「動かす」ことに焦点があります。
例:旗を上げる、手を上げる

送り仮名を間違えると、意味が変わってしまうことがあります。
例えば、「噴水が吹き上がる」を「噴水が吹き上る」と書いてしまうと、噴水が「ふきのぼる」と読んでしまいます。
「亀が浮き上る」「雨上る」「男が立上る」など、俳句では頻繁に目にするので、注意しましょう。


「上る」「上がる」「上げる」の文語

俳句は伝統的に文語(昔の言葉)で書かれることが多いため、「上る」「上がる」「上げる」を文語に直して使うことがあります。

口語文語(と活用)
上る(のぼる)上る(のぼる) 四段活用
上がる(あがる)上がる(あがる) 四段活用
上げる(あげる)上ぐ(あぐ) 下二段活用

ここで、注意したいのは「上げる(あげる)」です。文語では「上ぐ(あぐ)」となり、活用も変わります。

「上ぐ」の活用(下二段活用)

未然形連用形終止形連体形已然形命令形
-げ-げ-ぐ-ぐる-ぐれ-げよ

「上ぐ(あぐ)」の連用形は「上げ(あげ)」です。
連体形は「上ぐる(あぐる)」になるなど、現代語とは少し異なる変化をします。この活用を理解しておくと、より文語表現を使いこなせます。


古文で使われる助詞



文語表現での例句

実際に俳句でどのように使われているのか、例句を見てみましょう。

「上る(のぼる)」の例句

一斉に死者が雷雨を駆け上る 片山桃史 - 
上る地球も歯車も廻っている 木原翠々木原翠々の句集 (Amazon) >> 

「上がる(あがる)」の例句

初なすび水の中より跳ね上がる 長谷川櫂長谷川櫂の句集 (Amazon) >> 
蛇過ぎてゆっくりと草立ち上がる 正木ゆう子正木ゆう子の句集(Amazon) >>

「上ぐ(あぐ)」の例句

我が視線断たんと蟹は螯上ぐ 木幡忠文木幡忠文の句集(Amazon) >>
夕ざくら見上ぐる顔も昏れにけり 桂信子桂信子の句集 (Amazon) >> 



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「のぼる」「あがる」「あげる」の漢字の使い分け

同じ読み方でも、漢字によって意味が大きく異なります。これらの漢字の使い分けも理解しておくと、表現の幅がさらに広がります。

「のぼる」の漢字

  • 上る:単に上へ行くこと。階段を上る、坂道を上るなど。
  • 登る:高い場所に「自力で」上り詰めること。山に登る、木に登るなど。
  • 昇る:自然現象などで「高く上っていく」こと。日が昇る、煙が昇るなど。

「あがる」の漢字

  • 上がる:下から上に移動する「到達」に焦点があります。空に上がる、幕が上がるなど。
  • 挙がる:多くのものの中から「選ばれる」「表に出る」こと。候補に挙がる、手が挙がるなど。
  • 揚がる:空や水面に「上がる」こと。凧が揚がる、花火が揚がるなど。

「あげる」の漢字

  • 上げる:下から上に「動かす」こと。手を上げる、旗を上げるなど。
  • 挙げる:全体の中から「選んで示す」こと。例を挙げる、国を挙げて応援するなど。
  • 揚げる:油で熱すること。また、空や水面に「揚げる」こと。天ぷらを揚げる、凧を揚げるなど。


これらの違いを意識して言葉を選べば、情景をより鮮やかに、そして正確に読み手に伝えることができます。
ぜひあなたの俳句づくりに役立ててください。



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この記事で言葉の違いを学んだように、俳句には他にも似て非なる言葉が数多くあります。
あなたの句をさらに磨き上げるために、他の言葉の使い分けをぜひチェックしてみてください。

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