神植とは
夏の季語に、田植えの時期に行われる神事「御田植(おたうえ)」があります。歳時記によっては、この関連季語として「神植(かみうえ)」という言葉が載っているのを目にすることがあります。1.2.3)
しかし、この「神植」という言葉は、辞書や一般的な書籍ではほとんど見当たりません。一体、どんな神事なのでしょうか?
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謎の季語「神植」の正体
この言葉の謎を解くために調べてみると、とても興味深いことが分かりました。
実は、「神植」という言葉は、「御田植祭(おたうえまつり)」という行事の誤記である可能性が高いのです。
- 御田植祭(おたうえまつり):稲作の豊作を祈願して行われる、田植えの神事。日本各地の神社で古くから行われてきました。
- 神植(かみうえ):この言葉を指す明確な神事や行事の記録は、現在のところ見つかっていません。
ある自治体のウェブサイトで「御神植祭」という言葉が使われていた例がありましたが、その自治体も「御田植祭の誤りだろう」と回答しています。
季語を選ぶということ
季語は、俳句に季節感や情景を加えるための大切な道具です。しかし、中にはこの「神植」のように、明確な意味や由来が分からない言葉が季語として載っていることがあります。
もしあなたが「神植」という言葉を俳句で使った場合、読者はその言葉が何を指すのか分からず、作品の意図が伝わりにくくなってしまいます。
季語を選ぶことは、言葉の持つ意味を理解し、その言葉が読者にどう伝わるかを考えることでもあります。
歳時記に載っている言葉を鵜呑みにして使うのではなく、その言葉の持つ背景を自分自身で調べてみる。そうすることで、あなたの俳句はさらに奥深いものになるでしょう。
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参考資料
1) 角川書店.(2019).合本俳句歳時記.KADOKAWA.
2) 汀子稲畑.(1999).三省堂ホトトギス俳句季題便覧.三省堂.
3) 角川書店.(2022).新版角川俳句大歳時記.KADOKAWA.
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