「聞く」「聴く」「訊く」のどれを使えばいいのか、迷ったことはありませんか?
この3つの漢字は、それぞれ異なる意味を持つため、状況に応じて正しく使い分けることが大切です。
この記事では、それぞれの漢字が持つ意味と、具体的な使い分けのポイントを分かりやすく解説します。
3つの「きく」の意味の違い
まずは、それぞれの漢字が持つ基本的な意味を確認しましょう。
聞く
自然に音が耳に入ってくるときに使います。また、相手の言葉を受け入れたり、質問したり、匂いをかぐ場合にも「聞く」を使います。
- 例:
- 隣の部屋から話し声が聞える。
- 彼の意見を聞く。
- 先生に質問を聞く。
- お香を聞く。
聴く
意識的に、注意を向けて耳を傾けるときに使います。ただ音が耳に入るだけでなく、「集中して内容を理解しようとする」というニュアンスが含まれます。
- 例:
- クラシック音楽を聴く。
- 国民の声を聴く。
- 最終講義を熱心に聴く。
訊く
疑問に思っていることや知らないことを尋ねるときに使います。「質問する」という意味合いが強いのが特徴です。
ただし、「訊く」は常用漢字ではない表外字のため、公的な文書や一般的な文章では「聞く」が使われます。
- 例:
- 道行く人に道を訊く。
- 自分の胸に訊く。
使い分けのポイントと例文
それぞれの違いをさらに詳しく見ていきましょう。
漢字 | 意味 | 使い分けのポイント | 例文 |
聞く | 音が耳に入る、質問する、匂いをかぐ | 自然に聞こえる場合や、一般的な質問、匂い、味などの感覚を表現する場合に使う | ・隣の家のテレビの音が聞える ・先生に課題について聞く ・香を聞く |
聴く | 意図的に耳を傾ける | 意識を集中して聞く、真剣に聞く、という場合に使用する | ・お気に入りのアーティストの曲を聴く ・友人の悩みを聴く ・講義を聴く |
訊く | 質問して答えを求める | 質問や尋ねるという意味で使う。常用漢字ではないため、「聞く」で代用されることが多い | ・交番で道を訊く ・犯人を厳しく訊く |
「聞く」にまつわる補足情報
熟語で違いを理解する
「聞く」と「聴く」どちらを使えばいいか迷ったときは、それぞれの熟語を考えると分かりやすくなります。
- 「聞」を使った熟語
- 見聞(見たり聞いたりすること)
- 醜聞(世間の噂やスキャンダル)
- 伝聞(人から伝え聞くこと)
- 百聞(何度も聞くこと)
- 「聴」を使った熟語
- 傾聴(耳を傾けて熱心に聞くこと)
- 傍聴(議会や裁判などを見聞すること)
- 拝聴(謹んで聞くこと)
- 聴取(聞き取ること)
俳句における「聞く・聴く・訊く」の使い分け
俳句では、漢字が持つ微妙なニュアンスを表現するために、これらの漢字が使い分けられることがあります。
- 「聞く」の例 天山のこと聞かせてよ渡り鳥 (渡り鳥よ、たまたま耳に入るように天山(佐賀県)のことを私に話してほしい。)
- 「聴く」の例 シューベルト聴く掌の冷菓子 (掌に冷菓子を持ちながら、集中してシューベルトの曲を聴いている。)
- 「訊く」の例 男来て出口を訊けり大枯野 (大枯野を歩いていたら、男が私に出口を尋ねてきた。)
このように、作者がどのような意図でその言葉を選んだのかを想像すると、作品の深みがより理解できます。
俳句だけでなく、詩や小説など、あらゆる文章を書く際には、単に音の響きだけでなく、漢字が持つ意味を意識することが、より豊かな表現につながるでしょう。
「聞く」を使った俳句
一束の菊の近事を虚言(うそ)と聞く 宇多喜代子 | 宇多喜代子の句集(Amazon) >> |
亀鳴くと首をもたげて亀の聞く 中原道夫 | 中原道夫の句集(Amazon) >> |
「聴く」を使った俳句
初霜やひとりの咳はおのれ聴く 日野草城 | 日野草城の句集(Amazon) >> |
目を閉じて水のありかを聴く守宮 土屋秀夫 | 土屋秀夫の句集(Amazon) >> |
「訊く」を使った俳句
涅槃雪彼の世の話母に訊く 山田光風 | - |
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「きく」とひらがなで書くのは避けるべき?
ひらがなで「きく」と書くと、読み手はどの漢字を当てはめるべきか迷ってしまいます。
例えば、「天山のこときかせてよ渡り鳥」と書かれた場合、読者は「聞く」「訊く」のどちらのニュアンスなのか判断が難しくなります。
意味が大きく変わってしまうため、漢字で表現できる言葉は、できる限り漢字で書くことをお勧めします。
「聞く」「聴く」「訊く」の使い分けについて、理解を深めていただけましたでしょうか?
それぞれの言葉が持つ意味を意識して使うことで、より正確で豊かな表現が可能になります。
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あなたの句をさらに磨き上げるために、他の言葉の使い分けをぜひチェックしてみてください。
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