俳句における「答える・応える」の使い分け

俳句や文章を書く際、「こたえる」という言葉を使うときに、「答える」と「応える」のどちらを使えば良いか迷ったことはありませんか?

この二つの漢字は、意味が大きく異なるため、混同して使うと意図が伝わらなくなってしまいます。

ここでは、「答える」と「応える」の正しい意味と使い分け、そして俳句での使い方について解説します。


「答える」と「応える」の意味の違い

まずは、それぞれの漢字が持つ基本的な意味を確認しましょう。

漢字  意味使い分けのポイント例文         
答える質問や問いかけに対して、返事解答をすること。問いかけに対して言葉や文字で返事をする場合に使う。・先生の質問に答える
・読者の疑問に答える
・電話に答える
応える期待や要求などに対して行動すること。また、報いること。相手の期待や要求、恩義などに沿うように行動する場合に使う。・ファンの期待に応える
・恩師の厚意に応える
・時代の変化に応える



使い分けのポイント

  • 「答える」は、質問や問いかけが起点となります。問いに対して「答え」という形で返事を返すイメージです。
  • 「応える」は、期待や要求、恩義などが起点となります。それらに応じて「行動」を起こすイメージです。




「答える」について

それぞれの言葉について、さらに詳しく見ていきましょう。

「答える」の文語

「答える」の文語表現としては、「答ふ(こたふ)」があります。

古典文学などでは「問ふに答ふ」といった形で使われます。

「答ふ」の活用

答ふ
下二段活用

未然形連用形終止形連体形已然形命令形
-へ-へ-ふ-ふる-ふれ-へよ



古文の活用表(動詞・形容詞)はこちらで確認できます >>


「答ふ」を使った俳句

「答ふ」は、質問や呼びかけに応じる様子を表現する際に使われます。

事も知らずと答へ老の春    高浜虚子高浜虚子の句集 (Amazon) >> 
初蝶来何色と問ふ黄と答ふ    高浜虚子高浜虚子の句集 (Amazon) >> 




「応える」について

「応える」の文語

「応える」の文語表現も、「応ふ(こたふ)」です。「答ふ」と同じ形ですが、意味合いで区別されます。

「期待に応へる」「恩に報(むく)い応ふ」のように使われます。

「応ふ」の活用

応ふ
下二段活用

未然形連用形終止形連体形已然形命令形
-へ-へ-ふ-ふる-ふれ-へよ


古文の活用表(動詞・形容詞)はこちらで確認できます >>


「応ふ」を使った俳句

「応ふ」は、何らかの働きかけや期待に応じる様子を表現する際に使われます。

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夜の高さ鳴呼と応へて冬木かな   渡邊文子渡邊文子の句集 (Amazon) >> 



たった一文字の違いですが、意味は大きく変わります。俳句では、言葉一つひとつが持つ意味を正確に理解することが、作者の意図を読者に伝える上で非常に重要です。

句作の際は、「どちらの意味で使いたいのか」を意識して、適切な漢字を選ぶように心がけましょう。



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