「俳句は難しい」「何を詠んだらいいかわからない」そう感じていませんか？
実は、ちょっとした視点を変えることで、俳句は劇的に作りやすく、深みのあるものに変わることがあります。
その秘訣は２点、時間を意識することと、五七五の型を意識することです。
「時間軸」を意識しよう
あなたが詠もうとしている出来事は、一瞬のきらめきですか？それとも人生をかけた長い物語ですか？
この「時間幅」を意識するだけで、詠む対象が絞られ、ネタ探しも楽になります。
桜の俳句で「時間」の長さを比較
次の句は、すべて「桜」を詠んでいますが、表現している時間の長さは全く異なります。
短い順に並べてみましょう。
| 時間幅 | 俳句 | 込められた情景の瞬間 |
| 1秒 | しんとして露をこぼすや朝桜 | 露が一粒、葉から落ちる「一瞬の動き」 |
| 1分 | 花の雲鐘は上野か浅草か | 遠くの鐘の音が聞こえ、耳を澄ませる「数秒間の思索」 |
| 1時間 | ときをりの風のつめたき桜かな | 桜の木の下で、時折吹く風を感じている「滞在中の感覚」 |
| 6時間 | 寺町の静けさもどる桜しべ | 賑わいが終わり、夕方から夜にかけて静寂が戻る「半日の変化」 |
| 1年 | さまざまのこと思ひ出す桜かな | 桜を見るたびに毎年繰り返す「長い人生の回顧」 |
このように、どの俳句にも「時間」は含まれています。
「得意な時間」を見つけましょう
漫然と俳句を作るのではなく、自分の「得意な時間幅」を見つけましょう。
- 一瞬（1秒〜数分）が得意な人
必然的に、動物、植物、生活の動きなど、目まぐるしく変化するものをよく観察するのがおすすめです。
月や山のような変化の少ないものを長時間見つめても、瞬間の句のネタは見つかりにくいでしょう。 - 長い時間（1時間〜人生）が得意な人
「俳句は瞬間を捉えるものだ」という通説に惑わされず、長い時間の出来事や、時間の経過に適した季語（例えば、移りゆく季節全体を詠むものなど）を意識して作ると、才能が開花するでしょう。
瞬間の句ばかり作ってマンネリを感じたら、あえて「長い時間の句」に挑戦してみるのも良いでしょう。
いつもと違う時間軸で季語を見つめることで、新鮮なインスピレーションが得られるはずです。
俳句の「かたち」を守りましょう
「時間軸」で対象を絞ったら、次は「かたち」です。
特に初心者の方に絶対に守ってほしいルールがあります。
俳句は十七音ではなく、「五七五」のリズムが大事です。
なぜなら、「五七五」は、一文を「俳句らしい作品」に変えてくれる魔法のフレームだからです。
俳句の五七五のルールは、こちらで記事にしています ＞＞
「五七五」が作品を俳句に変える証拠
次の二つの文を比べてみてください。
どちらも同じ十七音です。
| 句 | 音数 | 俳句らしく感じるか？ |
| 青葡萄が早朝に光っている | 5・7・5 ではない | 詩的だが、俳句とは思えない |
| 陽の射して光かがやく青葡萄 | 5・7・5 | 何となく、俳句の感じを受ける |
後者の方が「俳句らしい」と感じるのは、「五七五」が生み出す独特のリズムのおかげです。
このリズムこそが、読者に「これは俳句だ」と感じさせる最大の要素です。
リズムを崩すと、俳句らしさが減る
「五七五」のリズムと、「五七五」とは違うリズムの俳句を読み比べてみましょう。
| 俳句 | 俳句らしいか？ |
| ゆさゆさと／大枝ゆるる／桜かな （五・七・五） | ◎ 俳句らしい |
| さくら咲きあふれて／海へ雄物川 （意味での区切り） | △ 詩的だが、俳句らしさは薄れる |
五七五のリズムの方が、多くの人は「俳句らしい」と感じるはずです。
迷ったら「五七五」があなたを守ってくれる
俳句を始めたばかりの時、何をどう詠んでいいか分からないのは当然です。
しかし、「五七五」の型さえ守っていれば、そのリズムが作品を「俳句」へと昇華させてくれます。
だからこそ、初めのうちは、どんなに苦しくても「五七五」にまとめる努力をしてみてください。
慣れてきたとしても、安易に「五七五」を崩すことは、せっかく獲得した「俳句らしさ」を失うリスクを伴いますので、おすすめはしません。
最後に
「時間軸」を意識してテーマを絞り込み、「五七五」という型で表現する。
この２つのルールを意識して、あなたの俳句を次のレベルへと高めてください。
