俳句は自然を詠む詩、とも言えます。
ですので、俳句を始めると、それまでは気にも留めていなかった自然の細やかな変化に目が向くようになります。
庭に咲く草花や、道端で見かける植物、鳥や虫の鳴き声なども俳句の題材になるため、よく見るようになり、これまで以上に深く感じ取るようになります。
そうすると、普段、何気なく過ごしていた場所や、何度も見たことのあった風景が、まるで新しい世界のように感じられるようになります。
俳句を通して、自然の現象や、四季を象徴するものの多くのことに気づかされます。
俳句で「見る目」が変わる
日常生活の中で、私たちは多くのことを見過ごしがちです。特に、忙しい通勤や通学の途中では、景色に目を向ける余裕はあまりないかもしれません。しかし、俳句を始めると、ふとした瞬間に「今の風景、俳句にできるかも」と考えるようになります。そうすると、同じ道を歩いていても、今まで気に留めなかった草花や空の色に目が行き、自然の変化に気づくようになるのです。
例えば、夏の夕方の風が心地よいと感じた時、その涼しさを五七五で表現してみたくなるかもしれません。「夕風や 揺れる木々には 夏の声」といったように。こうした何気ない瞬間を詠むことで、日常の一コマが俳句という小さな詩に変わり、自分だけの感性を育てることができます。
さらに、俳句を作るためには、季節や自然に関する知識が必要になります。季語を調べたり、その意味や由来を学ぶことで、今まで知らなかった自然の事象や風物に出会うことができます。こうして、四季が持つ豊かな表情や、それぞれの季節に特有の魅力がより深く感じられるようになります。
四季の移ろいを肌で感じる
「日本には四季があるからいいよね」とよく耳にしますが、俳句を始めると、その言葉が持つ深い意味に気づきます。季節の移ろいは、ただ春から夏、秋から冬へと気温や景色が変わるだけではありません。春の中だけでも、初春、仲春、晩春というように、確実に季節が変わります。
つまり、1年で12の季節が移り変わる様子を感じることができるようになります。
いままで知っていた季節が、俳句を通してまったく違ったものに感じられるようになるでしょう。それと同時に、自然に対する感謝の気持ちも、次第に心の中で芽生えてくると思います。
俳句を詠むことは、自然との対話とも言えます。
季節ごとの小さな変化に気づき、自然というものがとても貴重で、儚くも美しいものだと気づくことができるのです。
俳句は古臭い?まずは一年間、試してみよう
「俳句なんて古臭いもの」と感じる人もいるかもしれません。しかし、実際に俳句を始めてみると、その印象はがらりと変わるでしょう。俳句は、決して古いものではなく、むしろ現代にこそ必要な「自然に目を向ける力」を養ってくれるものです。忙しい現代社会の中で、ふと立ち止まって季節の変化や自然の美しさに気づく時間を持つことは、とても贅沢で豊かな体験です。
俳句を始めるのに、特別な才能や知識は必要ありません。最初は簡単な季語から使ってみて、自分が感じたことを五七五のリズムで表現するだけです。それだけでも、自然に対する感受性がどんどん豊かになっていくことに気づくはずです。
まずは一年間、俳句を通して季節の移ろいに目を向けてみてください。