歳時記で『梅雨』を調べていると、『梅霖』や『黴雨』といった、少し聞き慣れない言葉が出てくることがあります。これらの季語は、梅雨を表す別の言葉です。
梅雨を表すいろいろな季語をしたの表にまとめています。
初めて目にする言葉でも、表を参考に、俳句作りにご活用ください。
梅雨の季語
下の表では、一番上の「紫陽花」が主季語、その下に並んでいるものが子季語になります。
子季語は、主季語の関連語、という考えで大丈夫です。
梅雨
梅雨(ばいう、つゆ) 梅霖(ばいりん) | 春から夏に移る時期にみられる雨の季節。梅雨時期の雨は長く、湿潤高温な気候はカビ害、食中毒などを招きやすい。「梅雨」と「五月雨」は同じであるが、梅雨は主として五月雨の降る季節をさし、五月雨は雨そのものをさすことが多い |
黴雨(ばいう) | 梅雨(ばいう)と同義。この時期に黴かびが生じやすいことから黴雨とも書く |
梅雨時(つゆどき) | 梅雨のころ。梅雨期。。梅雨時は生物(なまもの)がいたみやすい |
梅の雨(うめのあめ) | 「梅雨」の訓読み。梅の実が木から降り落ちることも「梅の雨」と言うので、俳句で使う場合は、間違われないように注意が必要 |
梅雨時期の感覚
梅雨寒(つゆざむ) | 梅雨時に訪れる季節はずれの寒さ |
梅雨冷え(つゆびえ) | つゆ時に急に冷えこむこと |
梅雨めく(つゆめく) | 梅雨らしくなる。梅雨という感じがはっきりすること |
梅雨じめり(つゆじめり) | 梅雨で湿っぽいこと |
雨の降り方
空梅雨(からつゆ) | 梅雨の期間でありながら雨量がきわめて少ないか、ほとんどない現象。 |
男梅雨(おとこづゆ) | 雨が降るときは短期間に大量に降り、降らないときはすっきりと晴れるような梅雨を男梅雨という |
女梅雨(おとこづゆ) | あまり強くない雨が長く続くような梅雨を女梅雨という |
長梅雨(ながつゆ) | 梅雨の期間が長いこと |
荒梅雨(あらづゆ) | 梅雨時期の荒れ模様の天気 |
雨の状態
長雨(ながあめ) | 長く降り続く雨。霖雨(りんう)。 |
霖雨(りんう) | 長く降り続く雨。三日以上降り続く雨。長雨(ながあめ)のこと |
梅雨前後の天候
走り梅雨(はしりづゆ) 迎へ梅雨(むかへづゆ) | 梅雨に先立って、梅雨らしい現象が現われること |
送り梅雨(おくりづゆ) | 梅雨明けのころの雨。雷を伴うことが多く、集中豪雨になることもある。去ってゆく梅雨を送るという |
戻り梅雨(もどりづゆ) 返り梅雨(かえりづゆ) | 梅雨明け後に、ふたたび梅雨に戻ったような長雨が続くこと。 |
ついり、墜栗花(ついり) 栗花落(ついり) | 梅雨に入ること |
梅雨明(つゆあけ) つゆの明(つゆのあけ) 梅雨あがる(つゆあがる) 梅雨の後(つゆのあと) | 梅雨が終ること。暦の上では入梅から三十日後とされる。梅雨前線が北上し、洋上に抜けると梅雨明けとなる。梅雨明け前は雷鳴を伴った豪雨となることも多く、その後は真青な夏空となる。 |
梅雨の頃の天文
梅雨夕焼 (つゆゆやけ、つゆゆうやけ) | 梅雨の時期に見られる夕焼け |
梅雨空(つゆぞら) 梅雨の空(つゆのそら) 梅天(ばいてん) | 梅雨どきの空模様をいう。空全体が分厚い雲に覆われて鬱陶しい |
梅雨晴(つゆばれ) 五月晴れ(さつきばれ) | 梅雨の期間中の一時的な晴れ間 |
五月空(さつきそら) 皐月空(さつきぞら) | 五月のさわやかに晴れわたった空 |
梅雨雲(つゆぐも) 五月雨雲(さつきぐも) | 梅雨どきの雲 |
梅雨曇(つゆぐもり) ついり曇(ついりぐも) | 梅雨どきの曇り空をいう。重くどんよりとした空である |
青梅雨(あおつゆ) | 梅雨の前から木々は青々となる。そうした木々の葉に降る雨を指す。 |
空梅雨(からつゆ) てり梅雨(てりつゆ) | 梅雨の期間に雨が少ないこと。てり梅雨。 |
梅雨雷(つゆかみなり) 梅雨の雷(つゆのらい) | 梅雨の最中の雷。梅雨の前線が日本を通過するときに発生しやすい。雷が鳴ると梅雨明けるとも言われる |
梅雨前線(ばいうぜんせん) | 5月から 7月にかけ、日本列島を南から北上する停滞前線。日本列島上に湿った暖気を南風として送り込む |
梅雨の月(つゆのつき) | 梅雨の夜に思いもかけず見つけた月のこと。梅雨の晴間の夜空に煌々として輝くこともあれば、雨上がりの束の間、雲間に顔を出すのも梅雨の月。 |
梅雨の星(つゆのほし) | 梅雨の時期に見られる星 |
五月雨について
「梅雨」と「五月雨」は同じですが、梅雨は主として五月雨の降る季節をさし、五月雨は雨そのものをさすことが多い
五月雨(さつきあめ、さみだれ) さつき雨(さつきあめ) | 陰暦五月頃(現代の六月)に降り続く雨。梅雨。 |
さみだる | 五月雨が降り出した状態 |
五月雨雲(さみだれぐも) | 陰暦五月(現代の六月)のころ、雨を降らす雲 |
五月曇(さつきぐもり) | 陰暦五月(現代の六月)のころの曇り空 |
五月晴れ(さつきばれ) | 梅雨の間のわずかな晴れ間 |
五月闇(さつきやみ) | 梅雨時期は雲が立ち込め、昼間でも薄闇となる |
「梅雨」を冠した季語
梅雨茸(つゆだけ) 梅雨の茸(つゆのきのこ) 梅雨菌(つゆきのこ) | 梅雨の時期に生える茸類の総称。倒木、切り株、湿った地面に生じる |
梅雨の山(つゆのやま) | 梅雨の頃の山をいう。たっぷりと雨を吸った山々の緑 |
梅雨穴(つゆあな) | 梅雨時、降り続く雨によって道路などが陥没することをいう。大きな陥没になると、地滑りなどを誘発しかねず、大きな災害に繋がることもある |
注意したい季語(菜種梅雨)
菜種梅雨(なたねつゆ)という季語があります
菜の花の盛りの頃に降る、春のやわらかな長雨を言います。梅雨は夏の季語ですが、菜種梅雨は春の季語であるため注意が必要です。
関連する俳句
梅雨深し踏めば木橋の応へたり 暮目良雨
神宮の森の暗さや梅雨鴉 暮目良雨
梅雨の俳句にはこのようなものがあります。俳句作りの参考になさってください。
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