「燕」の季節ごとの季語

四季で見られる季語

通常「燕」といえば春(2~4月)の季語になります。
ただ、夏や秋にも燕の特徴的な姿を見ることができ、それぞれ夏燕、秋燕などと呼ばれています。
燕の季語の中には、濡燕や諸燕など、聞きなれない季語もあるので、それらの意味も含めて紹介します。
俳句作りの参考にして下さい。



(春の季語の)燕

燕(つばめ)、乙鳥(おつどり)、乙鳥(つばめ)、玄鳥(つばめ)、つばくら、つばくらめ、つばくろ

ツバメ科の鳥。全長 17cm。背面は光沢のある藍黒色、額と喉は赤褐色。腹面は白く、喉と胸の間に黒色の横帯がある。尾羽は長く、切れ込みの深い燕尾形。
ツバメは春半ば、南方から渡ってきて、人家の軒などに巣を作り雛を育てる。
俳句では春(2~4月)の季語になっています。

春すでに高嶺未婚のつばくらめ   飯田龍太    飯田龍太の句集 (Amazon) >> 
乙鳥はまぶしき鳥となりにけり   中村草田男  中村草田男の句集 (Amazon) >>


飛燕(ひえん)

飛んでいるツバメをいう。

秋霖の夕焼ほのと飛燕見ゆ   西島麦南   西島麦南の句集 (Amazon) >> 



濡燕(ぬれつばめ)

雨に濡れているツバメをいう。

秋霖帰らんとして帰らぬ様や濡れ燕  夏目漱石  夏目漱石の句集 (Amazon) >> 



川燕(かわつばめ)

川にいるツバメをいう。巣作りのために泥を集めに飛んでくる。

里燕(さとつばめ)

里にいるツバメをいう。

世がよいぞよいぞ野燕里つばめ   小林一茶   小林一茶の句集 (Amazon) >> 


群燕(むらつばめ)

群をなして飛んでいるツバメをいう。

燕燕群れ集へるところ雪解沢   中杉隆世   中杉隆世の句集 (Amazon) >> 


諸燕(もろつばめ)

雌雄そろっているツバメ。諸は2つなどの意味がある。


夕燕(ゆうつばめ)

夕ぐれに飛び回るツバメ。

夕燕我には翌のあてはなき   小林一茶   小林一茶の句集 (Amazon) >> 


燕来る(つばめくる)

2~3月ごろにツバメが日本に渡来すること。軒や梁などに巣を作る。

燕来る天はしがらみなき大河   山田径子   山田径子の句集 (Amazon) >> 


初燕(はつつばめ)

その年になって初めて目にするツバメをいう。

球場に万の空席初燕   今井聖   今井聖の句集 (Amazon) >> 



岩燕(いわつばめ)、だけつばめ

ツバメ科の鳥。尾の切れ込みが浅く、体長は十五センチくらい。もともとは山地や海岸の岸壁や洞穴に集団で営巣していたが最近はビルや橋の下などに巣を作る。
産卵期は4~8月にかけて。壷状の巣に一回に三四個の卵を産む。
「ジュリジュリピィピィ」と早口に濁った声でさえずる。

おそるるな暗き口あけ岩燕   山崎聰   山崎聰の句集 (Amazon) >> 



燕の巣(つばめのす)、巣燕(すつばめ)、巣乙鳥(すおつどり)

燕は比較的人の集まるところ、人家の軒下、橋の下などに泥や藁で巣を作る。
人の集まるところには蛇や烏などの外敵が近づかなからとされている。
前年の古巣に土をつけ足して作ることもある。巣ができるとそこで卵を産み、孵化させる。

大和八木駅つばめ飛び燕の巣   和知喜八   和知喜八の句集 (Amazon) >> 


(夏の季語の)燕

夏燕(なつつばめ)

夏に飛ぶツバメ。燕は春に南方から渡ってきて繁殖活動に入る。四月下旬から八月にかけて二回産卵する。雛を育てる頃の燕は、子燕に餌を与えるため野や町中を忙しく飛び回る。

家ごとに格言をもち夏燕   舘岡誠二   舘岡誠二の句集 (Amazon) >> 


親燕(おやつばめ)

ヒナを持つツバメ。

たそがれへ寸刻惜昔しみ親燕  岡崎伸   岡崎伸の句集 (Amazon) >> 



燕の子(つばめのこ)、子燕(こつばめ)

その年に生まれたツバメの子ども。五六羽のツバメの子が親から餌をもらうために大きな口を開けて巣から身を乗り出している姿はほほえましい。

早鞆の風に口あけ燕の子   飴山實  飴山實の句集 (Amazon) >> 


燕の巣(つばめのす)

ツバメの作った巣。
比較的人の集まるところ、人家の軒下、橋の下などに泥や藁で巣を作る。

わが家に燕の巣無く孫もなし   隈元拓夫  隈元拓夫の句集 (Amazon) >> 


(秋の季語の)燕

燕帰る(つばめかえる)、帰燕(きえん)、帰る燕(かえるつばめ)、去ぬ燕(いぬつばめ)、巣を去る燕(すをさるつばめ)

秋になって南方へ帰っていく燕のことを言う。
去ぬ燕の「去ぬ」は、行ってしまうなどの意味がある。
夏の間に雛をかえし九月頃群れをなして帰ってゆくと、淋しさが残る。

はや帰燕こころがざわざわしてならぬ  折原あきの 折原あきのの句集 (Amazon) >>
燕帰るわたしも帰る並の家   金子兜太  金子兜太の句集 (Amazon) >>


秋燕(しゅうえん)

秋になっても見かけるツバメをいう。

秋燕をくらきが吸ふ遠山家   能村登四郎  能村登四郎の句集 (Amazon) >> 


残る燕(のこるつばめ)

南方へ渡らず日本各地の暖地に残る一団のツバメをいう。

燕の有名な俳句

燕の有名な俳句はいろいろありますが、個人的に好きなものは次の2つです。

つばめつばめ泥が好きなる燕かな  細見綾子 細見綾子の句集 (Amazon) >>
来ることの嬉しき燕きたりけり  石田郷子 石田郷子の句集 (Amazon) >> 

どちらの俳句も、言葉がやさしく内容もやさしい。作っている人のやさしさも感じられる俳句です。
こういう俳句を作りたいな、と思います。


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燕もそうでしたが、下の季語も季節をまたがって季語があります
それぞれの季節で様子は変わるので、使うときは微妙な違いも知っておくと、俳句作りに役立ちます

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