俳句では「椿」といえば春の季語ですが、椿は四季を通じて見ることができます
ここでは、四季それぞれの椿の季語と、その意味を紹介しています
俳句作りの参考になさってください
春の椿
椿(つばき)
椿は、春を代表する花
万葉集のころから歌にも詠まれ日本人に親しまれてきた
つやつやした肉厚の葉の中に真紅の花を咲かせる
花びらが散るのではなく、花ひとつが丸ごと落ちるので落椿という言葉もある
最も一般的な藪椿のほか、八重咲や白椿、雪椿などの種類もある
フェンスより顔出す椿へおはようさん 吉村輝子 | 吉村輝子の句集(Amazon) >> |
一塊のわれか椿か流れおり 渋川京子 | - |
山茶(さんちゃ・つばき)
ツバキの漢名
山椿(やまつばき)
山に自生しているツバキ
山椿耐える力を貫きぬ 飯田蒼水 | - |
乙女椿(おとめつばき)
ツバキの一品種。花はふつう桃色で重弁
乙女椿もう終りたき錆の渦 小檜山繁子 | 小檜山繁子の句集(Amazon) >> |
水神に乙女椿とアルミ貨と 窪寺寿美枝 | - |
白椿(しろつばき)
白花をつけるツバキ
野生のヤブツバキの白花品をさす場合が多い
一生のふとしたことに白椿 大坪重治 | - |
一瞬やかたちをすれば白椿 豊口陽子 | - |
紅椿(べにつばき)
紅花をつけるツバキ
急流のはじきだしたる紅椿 松本ヤチヨ | 松本ヤチヨの句集(Amazon) >> |
授からぬ娘の黒髪に紅椿 松本まり | - |
一重椿(ひとえつばき)
一重咲きの椿
八重椿(やえつばき)
重弁の花をつける椿
八重咲きの椿
玉椿(たまつばき)
ツバキの美称
ツバキは古来長寿の木とされ、末長くめでたい意をこめる
海上を驟雨きらきら玉椿 岸本尚毅 | 岸本尚毅の句集(Amazon) >> |
玉椿八十八の母の息 桂信子 | 桂信子の句集(Amazon) >> |
つらつら椿(つらつらつばき)
つらなって咲いている椿
落椿(おちつばき)
散り落ちた椿の花
はなやかに沖を流るる落椿 山口青邨 | 山口青邨の句集(Amazon) >> |
わが影をいくつはみ出し落椿 恩田侑布子 | 恩田侑布子の句集(Amazon) >> |
散椿(ちりつばき)
花の散った椿
また、散り落ちた椿の花
藪椿(やぶつばき)
林の中に生息する樹木
赤い5弁花が咲く
ふだん着で行く豊川の藪椿 林弓恵 | - |
玄海に紅こぼし藪椿 仰木節子 | - |
椿餅(つばきもち)
餅菓子の一
起源は古く平安時代
中年の恋占いに椿餅 倉本岬 | - |
糝粉(しんこ)
または道明寺粉を蒸してあんを包み、二枚の椿の葉で挟んだもの
椿の葉の光沢と常緑をともに愛でる菓子
夏の椿
沙羅の花(しゃらのはな)、夏椿(なつつばき)
ツバキ科の落葉高木
白い花びらに黄色の蕊をもつ
咲いてもその日のうちに落ちてしまう一日花
花の形が椿に似ていることから、夏椿ともいう
「沙羅双樹」は別の木である
そろそろと見栄も小出しに沙羅の花 井上美沙子 | - |
なほざりに雨ふる沙羅の花蕊かな 西賀久實 | - |
あの人もあの人も来た夏椿 田中公子 | 田中公子の句集(Amazon) >> |
あり余るひとりの闇の夏椿 二村秀水 | - |
杪羅(しゃら)
ナツツバキの異名
姫沙羅(ひめしゃら)
関東以西の山林中に自生
白い5弁花を開く
琴の音を辿り姫沙羅散る小路 宮本源 | - |
椿挿す(つばきさす)、挿椿(さしつばき)
椿を挿し木で育てること
七月から八月頃が良いとされる
姫椿(ひめつばき)
ツバキ科の常緑高木
5、6月ごろ、白色の5弁花を開く
秋の椿
椿の実(つばきのみ)
椿は夏、翠色の実をむすび、やがて紅を帯び、秋には褐色となり成熟を迎える
どこにでも見え椿の実おとこ神 和知喜八 | 和知喜八の句集(Amazon) >> |
奪衣婆も堂もすすけて椿の実 上嶋稲子 | 上嶋稲子の句集(Amazon) >> |
冬の椿
冬椿(ふゆつばき)、寒椿(かんつばき)、早咲の椿(はやざきのつばき)
冬に咲く早咲きのツバキ
凛とした姿は茶人好みでもある
冬椿咲けり父母在り孝なさず 吉田未灰 | 吉田未灰の句集(Amazon) >> |
冬椿葬りのあとの白いおにぎり 堀之内長一 | - |
ぞんざいな存在を断ち寒椿 柊中真也 | - |
ふるさとは風の中なる寒椿 入船亭扇橋 | 入船亭扇橋の句集(Amazon) >> |
雪椿(ゆきつばき)
ツバキ科の常緑小高木
本州の日本海側の山地に自生
赤い花が咲く、寒さに強い
山茶花(さざんか、さざんくわ)
日本固有のツバキ科の常緑小高木
九州・四国の山地に自生
白か淡紅色の五弁の花
散るときは花びらがばらばらに落ちる
園芸種として八重咲きや濃紅・絞りなどもある
さざんかの白敷き避難所の夜はじまる 矢野千代子 | 矢野千代子の句集(Amazon) >> |
ふと咲けば山茶花の散りはじめかな 平井照敏 | 平井照敏の句集(Amazon) >> |
椿の有名な俳句
椿の有名な俳句はいろいろありますが、個人的に好きな椿の俳句です
椿落ちてきのふの雨をこぼしけり 与謝蕪村 | 与謝蕪村の句集(Amazon) >> |