「夕焼け」の季節ごとの季語

四季で見られる季語

俳句では「夕焼」と言えば夏の季語です
夕焼自体は四季を通して見られるため、秋に見られるものは「秋の夕焼」、冬に見られるものは「冬の夕焼」というように呼び分けます
四季を通じて見られる夕焼けですが、微妙な違いを覚えて使えるようになると、より良い俳句が作れるようになります
ここでは、四季の夕焼けに関する季語をまとめています

(夏の季語の)夕焼け

夕焼(ゆうやけ、ゆやけ)

夕焼(ゆうやけ、ゆやけ)
単に夕焼けというと夏の季語になります
読み方は「ゆうやけ」のほかに「ゆやけ」とも読み、俳句では音数を合わせるときに「ゆやけ」を使うことがあります
夕焼けは、日没の時間帯に地平線近くの空が茜色に染まる現象をさしますが、日が沈んだ後もしばらく空は染まっています
夕焼けは翌日の晴天の予兆とされます
夏の夕焼は、黄金色を帯びて壮大なため、夏の季語とされています

貝殻に瀬戸の夕焼けひと掬ひ  鷹羽狩行   鷹羽狩行の句集 (Amazon) >> 
夕焼は膳のものをも染めにけり  富安風生 富安風生の句集 (Amazon) >>


夕焼雲(ゆうやけぐも)

夕焼雲(ゆうやけぐも、ゆやけぐも)
夕焼けに関連する季語で、「ゆうやけぐも」のほかに「ゆやけぐも」とも呼びます
夕焼けに赤く染まった雲をいいます

夕焼雲ススメススメを疑ひぬ 竹貫示虹   竹貫示虹の句集 (Amazon) >> 


梅雨夕焼(つゆゆうやけ)

梅雨夕焼(つゆゆうやけ、つゆゆやけ)
梅雨時の夕焼けをいう季語です
水蒸気が多いため、夏の中でも特に色が鮮やかに見えるのが特徴です

いちにちの景のをはりの梅雨夕焼 鷹羽狩行  鷹羽狩行の句集 (Amazon) >> 


(秋の季語の)夕焼け

秋の夕焼(あきのゆうやけ)

秋の夕焼は「あきのゆうやけ」のほか「あきのゆやけ」とも読みます
助詞を消して、秋夕焼(あきゆうやけ、あきゆやけ)として季語で使われることもあります

「夕焼」と言えば夏の季語であるため、秋のものは「秋の夕焼」というように「秋」を冠して使います
秋の夕焼は、どこか寂しさを伴ない、時間も短いのが特徴です
海や湖面、川などの水面を染める秋の夕焼は情趣に富み、季語としても好まれます

絢爛と亡びし平家秋夕焼 長谷川翠  長谷川翠の句集 (Amazon) >> 


秋夕映(あきゆうばえ)

秋夕映(あきゆうばえ)という季語もあります
秋の夕日を受けて、ものが照り輝くこと。また、美しく見えることを言います。
夕焼けと夕映えの違いを理解して俳句を作ると、より良い作品が生まれるはずです

秋夕映の海より来たり鮃の死  森澄雄   森澄雄の句集 (Amazon) >> 


(冬の季語の)夕焼け

冬の夕焼(ふゆのゆうやけ)

冬の夕焼は「ふゆのゆうやけ」のほか「ふゆのゆやけ」とも読みます
助詞を消して、冬夕焼(ふゆゆうやけ、ふゆゆやけ)として季語で使われることもあります

「夕焼」と言えば夏の季語であるため、冬のものは「冬の夕焼」というように「冬」を冠して使います
冬は日没が一年で最も早いため、夕焼けを楽しむ時間は短いのですが、枯木立や建物のコントラストが美しく見えて印象深いものがあります

男来て山羊と親しむ冬夕焼 坪内稔典  坪内稔典の句集 (Amazon) >> 


冬茜(ふゆあかね)

冬空を茜色に染める夕焼を、冬茜(ふゆあかね)といいます
時間は短いものの、鮮烈な色は美しく、冬樹の枝間に眺めるのも情趣があります

引き際の波輝けり冬茜 鈴木庸子  鈴木庸子の句集 (Amazon) >> 


寒夕焼(かんゆうやけ)

寒夕焼(かんゆうやけ、かんゆやけ)は、寒中の夕焼を指します
寒中は、小寒の初めから大寒の終わりまでの間で、冬の寒さが最も厳しい時期です
「冬の夕焼」ではなく「寒夕焼」を季語で使うと、より厳しい寒さを感じる俳句になります

寒夕焼青空すこし残しけり 長谷川照子  長谷川照子の句集 (Amazon) >> 


寒茜(かんあかね)

寒中の空を茜色に染める夕焼を、寒茜(かんあかね)といいます
「冬茜」ではなく「寒茜」を季語で使うと、より厳しい寒さを感じる俳句になります

鳩降るは病棟にのみ寒茜 沢木欣一   沢木欣一の句集 (Amazon) >> 


寒落暉(かんらっき)

寒落暉(かんらっき)は、冬の夕日(落暉)のことを言います
夕焼けは空が染まった現象ですが、寒落暉は夕日を指します
俳句で使うときも、ここは意識して使います

寒落暉ひかりこぼして水はこぶ 岡本眸  岡本眸の句集 (Amazon) >> 


(春の季語の)夕焼け

春の夕焼(はるのゆうやけ)

春の夕焼は「はるのゆうやけ」のほか「はるのゆやけ」とも読みます
助詞を消して、春夕焼(はるゆうやけ、はるゆやけ)として季語で使われることもあります

「夕焼」と言えば夏の季語であるため、春のものは「春の夕焼」というように「春」を冠して使います
春の夕焼けは、西の空をほんのりと染めるため、特有のおだやかな情緒が感じられます
この辺りを俳句に詠み込むと、良い俳句が作れます

大淀も蓮如の寺も春夕焼 朝妻力  朝妻力の句集 (Amazon) >> 
想ふこと春夕焼より美しく  富安風生 富安風生の句集 (Amazon) >> 


春茜(はるあかね)

春の夕暮れどきの茜色の空を、春茜(はるあかね)といいます
春独特のやわらかな色合いを持っていて、のどかな一日が暮れるのを惜しむような風情があります

鴨の水尾それぞれ離り春茜 小野恵美子  小野恵美子の句集 (Amazon) >> 



「夏茜、秋茜、冬茜、春茜」という季語に注意!!

冬茜(ふゆあかね)は、冬の空を茜色にそめる夕焼けを言います
ただ、「夏、秋、冬、春」のそれぞれ「茜」が付けば夕焼けということではありません
「夏茜」は夕焼けを指すのではなく、赤蜻蛉(あかとんぼ)の季語になっています
この言葉の誤用は絶対にしないように気を付けましょう
それぞれの季語と意味をまとめています

夏茜(なつあかね)赤蜻蛉の一種
秋茜(あきあかね)日本で最もよくみられる蜻蛉
冬茜(ふゆあかね)冬空を茜色に染める夕焼
春茜(はるあかね)春の夕暮れどきの茜色の空

「夏茜、秋茜」は蜻蛉(とんぼ)
「冬茜、春茜」は夕焼けです、間違わないようにしましょう

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