切れ字「けり」で俳句の世界を広げよう|初心者向け解説

切れ字について

俳句の切れ字「けり」をマスターして、表現の幅を広げませんか?
たった一つの言葉「けり」を加えるだけで、あなたの俳句作品は奥深く、そして美しくなります。

この記事では、初心者の方にもわかりやすく、切れ字「けり」の意味、使い方などを解説します。

初心者向けの丁寧な解説ですので、あなたも今日から俳句の中に使うことができます。

切れ字「けり」の意味

俳句では、切れ字の「けり」がよく使われます

赤い椿 白い椿と 落ちにけり  河東碧梧桐
(あかいつばき しろいつばきと おちにけり) 
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上記の俳句では、文末の「落ちにけり」という所で「けり」が使われています
意味は、その事実に気がついたことに深い感動をしたもので、「…たのだなあ」「…たなあ」となります

一方、切れ字の「けり」は、過去の出来事を回想的に表して「…たということだ」「…たそうだ」というように使われることもあります
例えば、次の俳句がそのような意味で使われています

いくたびも 雪の深さを 尋ねけり   正岡子規 
(いくたびも ゆきのふかさを たずねけり) 
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つまり、切れ字の「けり」は
①その事実に気がついた感動
②過去の出来事をしみじみと回想している

この2つの意味がある、ということです

切れ字の「けり」を使った俳句を鑑賞するときは、作者がどんな気持ちであったのか
作者のその心の動きを感じながら鑑賞をすると、より感動を感じることができます

他にも、切れ字の「けり」を使った俳句がありますので、見ていきましょう
作者の感情を感じながら鑑賞してみてください


切れ字「けり」を使った俳句

切れ字の「けり」を使った他の俳句を紹介します

そのなかに 芽を吹く榾の まじりけり   室生犀星 
(そのなかに めをふくほだの まじりけり) 
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つまみたる 山を春野に 下ろしけり   飯田晴
(つまみたる やまをはるのに おろしけり) 
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とらへたる 柳絮を風に 戻しけり   稲畑汀子
(とらへたる りゅうじょをかぜに もどしけり) 
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どうでしょうか、作者の心の動きを感じることはできたでしょうか

では次に、実際に切れ字の「けり」を使って俳句を作る際には、どこに置けば良いのかを説明します

切れ字「けり」を置く場所

切れ字の「けり」は、俳句のどこに置いても構わないとされています

〇〇〇けり/〇〇〇〇〇〇〇/〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇/〇〇〇〇〇けり/〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇/〇〇〇〇〇〇〇/〇〇〇けり

このように、上五、中七、下五のどの部分に置いても構いません

しかし、実際に多くの俳句を見てみると、「けり」が最も多く使われているのは、下五の最後です
上で紹介した俳句も全て下五の最後に「けり」が置かれています

俳句を始めたばかりの方は、まずは「けり」を下五の最後に置くことを意識すると、自然な俳句を作ることができるでしょう


続いては、切れ字の「けり」を俳句で使う際に、どのような言葉と組み合わせて使うと良いのか、見ていきましょう

切れ字「けり」の接続

切れ字の「けり」は、通常、動詞の連用形につけて使います

誘ひけり動詞の連用形+「けり」
流れけり動詞の連用形+「けり」


このルールを意識して、様々な動詞と組み合わせて使ってみることで、切れ字の「けり」の使い方が自然と身につくはずです
切れ字「けり」の使い方をマスターすることで、あなたの俳句は、より豊かな表現になるはずです


動詞の連用形+「けり」で作られた俳句を紹介します。参考にしてください。

うごけばひかる 真夏の空を 怖れけり  川島彷徨子  
(うごけばひかる まなつのそらを おそれけり)
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けふの月 馬も夜道を 好みけり 村上鬼城
(きょうのつき うまもよみちを このみけり)
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すぐ帰る 若き賀客を 惜しみけり  能村登四郎
(すぐかえる わかきがきゃくを おしみけり)
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「に」+「けり」で使うこともある

切れ字の「けり」は、動詞の連用形+「けり」で使われると説明をしましたが
動詞の連用形+「に」+「けり」として使うこともあります
意味は、「…てしまったのだなあ」「…しまったことだ」という、気づきの詠嘆となります

動詞の連用形+「に」+「けり」で作られた俳句も紹介しますので、参考にしてください。

滝の上に 水現れて 落ちにけり   後藤夜半
(たきのうえに みずあらわれて おちにけり) 
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くろがねの 秋の風鈴 鳴りにけり   飯田蛇笏
(くろがねの あきのふうりん なりにけり) 
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降る雪や 明治は遠く なりにけり   中村草田男 
(ふるゆきや めいじはとおく なりにけり) 
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その他の「切れ字」の記事

「俳句には、「けり」以外にも「や」や「かな」など、様々な切れ字があります
これらの切れ字は、俳句に奥行きと深みを与えてくれる大切な要素です
それぞれの切れ字が持つ特徴を理解することで、より豊かな表現の俳句を作ることができます

「や」や「かな」については、別の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください






「切字」が深く理解できる本

切字が生じさせる余白の様々な洞察が書かれています
読んでいて、「なるほど」と何度も思いましたし
読んだ後に、いままでに無かった視点で切字を使えるようになりました
切字の効果がいまいち分からない、という人にはお勧めです
切字の理解もできますし、切字の新しい視点が得られます



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