季語の中には、子季語として歳時記に掲載されているものもありますが、その意味が詳しく説明されていない場合もあります。子季語の意味を知ることで、より良い俳句を作ることができるので、今回はよく使われる主季語の「鮭」と、その子季語の意味をまとめてみました。
「鮭」の季語
下の表では、一番上の「鮭」が主季語、その下に並んでいるものが子季語になります。
子季語は、主季語の関連語、という考えで大丈夫です。
鮭【さけ】 | サケ目サケ科の海水魚。全長約1メートル。体は長い紡錘形で側扁し、尾びれ近くに脂びれがある。背側は暗青色、腹側は銀白色。北太平洋を広く回遊し、河川に上って産卵する |
鮭(しゃけ) | 鮭(さけ)と同じ |
初鮭(はつざけ) | はじめて川をさかのぼるサケ |
鮭漁(さけりょう) | 鮭をとる漁 |
鮭打(さけうち) | 川を登ってくるサケを、さおや棒などで打ってとること |
鮭小屋(さけごや) | 鮭漁のための小屋 |
季語の選び方、使い方のポイント
鮭(さけ)と鮭(しゃけ)
表では、鮭としゃけの両方の表記がありました。わざわざこのように書かなくてもよいのではないかと思われるかもしれません。しかし、俳句では、言葉の響きを大切にするため、文脈によって『さけ』と読んだり『しゃけ』と読んだりすることがあります。例えば、周りに『イ』の音が多い言葉が並ぶ場合、『しゃけ』と読むことで、より滑らかな音の流れを作り出すことができます。
漢字の『鮭』だけでは、作者がどちらの発音を意図しているのか、読者には分かりません。そのため、作者が特定の発音を強く意識している場合、ひらがなで表記することがあります。
初鮭について
『初鮭』という季語は、一年に一度、川を遡上する鮭の姿を捉えた言葉です。作者は、この特別な瞬間に出会い、深い感動を覚えたはずです。その感動を、読者にも共有してもらうために、『初鮭』という言葉を用います。
鮭漁、鮭打、鮭小屋について
鮭漁、鮭打、鮭小屋は、鮭漁に関わる人々の営みを表す季語として用いられます。
これらの季語を使う理由は、俳句表現をより洗練させるためです。例えば、「鮭を釣る」といった動詞を用いた表現は、具体的な行為を説明する一方で、俳句の簡潔さを損なう可能性があります。一方、「鮭漁」「鮭打」といった名詞は、行為そのものを凝縮し、読者の想像力を刺激します。
さらに、これらの季語は、それぞれの言葉に含まれるニュアンスによって、鮭を獲る場面の情景を鮮やかに描き出すことができます。「鮭漁」は広義の漁を表し、「鮭打」はよりダイナミックな捕獲の様子を連想させます。このように、季語の選択によって、俳句の世界に奥行きと深みを加えることができるのです。
関連する俳句
みちのくの鮭は醜し吾もみちのく 山口青邨
初鮭や市中を通る浅野川 岩田涼菟
鮭を使った俳句にはこのようなものがあります。俳句作りの参考になさってください。
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季語を選ぶ際には、様々な要素を考慮する必要がありますが、従来の歳時記には子季語の意味が詳しく記載されていないため、適切な季語を選ぶのが難しいという課題がありました。
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