俳句でみられる「涼しかり」の誤用について、説明します
涼しかり、はどこが誤用?
こんこんと水のながれて涼しかり
このような使い方をした俳句が多くみられますが、「涼しかり」という使い方はしません
なぜ「涼しかり」が誤用なのかですが
それを説明する前に、「涼し」の活用を見ます
今回のシク活用は、活用が二段表示されています
この場合、下段は「補助活用」と呼ばれるもので、その後に助詞がつながる場合に使われる活用です
つまり、「涼しかり」を使う場合は、「涼しかりけり」「涼しかりぬ」などのように使うということです
今回は「涼しかり」という表現で記事にしましたが、このような使い方は、実は「シク活用」全体に見られます
例えば、「侘びし」や「優し」といった「シク活用」においても、同様に「侘びしかり」「優しかり」などのように間違った表現が使われています
ですので、「涼しかり」だけを気を付けるのではなく、「シク活用」を使う場合は、常に気を付けるようにしましょう
「涼し」を使った俳句
次に、「涼し」を使った俳句を紹介します
使い方を確認してみましょう
こんこんと樹に水のぼり森涼し 中川聰子
水底の砂の涼しく動くかな 長谷川櫂
ゆるるたび涼しかりけり耳飾り 山家弘子
一句目は「涼し(終止形)」で終わっています
二句目は「涼しく(連用形)+動く(動詞)」で使われています
三句目は「涼しかり(連用形)+けり(助動詞)」で使われています
関連記事
「涼しかり」という文法の間違いについて説明をしましたが、俳句では「寂しけり」という間違いもよく見かけます。
念のために、こちらの記事にも目を通しておかれるとよいと思います
「寂しけり」の文法の間違いについて >>>
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基礎をしっかりと学べるので、間違った言葉の使い方がなくなりますし
表現したい言葉を、古語に直して使えるようになります
