俳句を詠む上で、「~ゆく」という言葉はよく使われますね。「過ぎゆく」「走りゆく」など、情景を描き出す言葉として便利な一方で、使い方によっては、句全体の印象をぼやかしてしまうことがあります。
今回は、「~ゆく」を削ることで、俳句がどのように変わるのか、その理由と効果について解説していきます。
なぜ「~ゆく」を削るのか?
「~ゆく」を削るべき理由は、大きく分けて3つあります。
- 意味が重複している場合が多い: 「走りゆく」という表現は、「走る」という動作と「ゆく」という移動が重複しています。
- 句の印象がぼやける: 「~ゆく」とだらだらと句が続いてしまうと、読者の心に響くような、切れ味のある一句になりません。 特に、句の最後に「~ゆく」がくると、余韻を残すどころか、中途半端な印象を与えてしまいます。
- 手抜きに見えてしまう可能性: 音数を合わせるために、無意識に「~ゆく」を付けてしまっている俳句を見かけます。 これは俳句として、少し安易な手法と言えるでしょう。
「~ゆく」を削ることで得られる効果
「~ゆく」を削ることで、俳句はどのような変化を遂げるのでしょうか。
- 句が引き締まる: 「~ゆく」を削ることで、句がぐっと引き締まり、印象的な一句になります。
- 言葉の力が強まる: 不要な言葉を削ることで、残った言葉の力が強まります。 例えば、「過ぎゆく」を「過ぐ(終止形)」と表現することで、より短く、力強い言葉になります。
- 読者の想像力を刺激する: 読者が、作者の言葉から情景を想像する余地を残すことができます。 「~ゆく」とただ終わらせるのではなく、読者に想像力を働かせてもらうことで、より深い味わいを生み出すことができます。
具体的な例
削る前 | 削った後 |
---|---|
時は過ぎゆく | 時は過ぐ |
花びらは散りゆく | 花びら散る |
川は流れゆく | 川流る |
「~ゆく」を削ったほうが、表現がすっきりします。
削る際の注意点
「~ゆく」を削ることは、すべてのケースで有効というわけではありません。 例えば、特別な効果を狙って「~ゆく」を使っている場合は、「~ゆく」が必要でしょう。
また、季語として「ゆく」が使われている、「夏ゆく」「大雨時に行く」などのケースでも、「~ゆく」は必要なので削れません。
大切なのは、一句一句、丁寧に言葉を選び、最も効果的な表現を選ぶことです。そのように俳句を作っていれば、自然に、ここでの「~ゆく」は問題だな、ということが分かるはずです。
まとめ
「~ゆく」は、俳句を詠む上で便利な言葉ですが、使い方によっては、句全体の印象を損なってしまうことがあります。 意味が重複している場合や、句の印象がぼやける場合は、思い切って削ってみましょう。 「~ゆく」を削ることで、より洗練された、印象的な一句を作ることができます。