春の訪れを表す季語に、二十四節気の「立春(りっしゅん)」があります。この立春と同じ意味として、「春になる」という季語が使われることがあります。 1)
では、この言葉を「春となる」と言い換えても、同じ意味なのでしょうか?
「~になる」と「~となる」には、微妙なニュアンスの違いが隠されています。
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「なる」と「となる」の微妙なニュアンス
私たちが普段使っている言葉には、無意識のうちに使い分けている「意味」があります。
| 〜になる | 〜となる | |
| 意識 | 自然な変化 | 強い意識、意外な変化 |
| 言葉の性質 | 口語的(話し言葉) | 文語的(書き言葉) |
| 変化の過程 | 変化の到達点 | 変化の途中から到達点まで |
「春になる」は、季節が巡り、当然に春が訪れるという、自然な変化の到達点を表しています。
一方、「春となる」は、寒さの厳しい冬を乗り越えて、ようやく春が訪れたという、変化を強く意識した言葉です。 2)
少し詩的な響きや、書き言葉としての重みを感じさせます。
季語に隠された「言葉の落とし穴」
これらの言葉を使うときに注意したいのが、「春春隣(はるとなる)」という季語です。
「春となる」は「春隣(はるとなる)」は、読み方が同じになってしまい、どちらを言っているのか分からなくなります。
- 春となる:春が訪れたことを表す季語。
- 春隣:冬の終わりで、春がすぐ近くまで来ていることを表す季語。
このように、同じ言葉でも意味が全く違います。
季語を選ぶことは、言葉のニュアンスを深く理解し、作者の意図を正確に読者に伝えることです。さあ、あなたも言葉の微妙な違いを意識しながら、俳句を詠んでみませんか?
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参考資料
1)日外アソシエーツ.季語・季題辞典.https://www.weblio.jp/cat/dictionary/nkgmj (参照:2024.04.04)
2)作間大樹.(2013).「~になる」と「~となる」の使い分け : アンケート調査に基づく考察.山口国文,36号,pp.113-122.https://petit.lib.yamaguchi-u.ac.jp/21611
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