春の季語に、「鳥つるむ・鳥さかる」があります
「角川俳句大歳時記」「合体俳句歳時記」は
鳥つるむ・鳥交る(さかる)と書いています 2.3)
「現代俳句歳時記」は
鳥交む(つるむ)・鳥交る(さかる)と書いています 4)
ただ、一般的に
「つるむ」は「交尾む・遊牝む」
「さかる」は「盛る」と書くのではないでしょうか?
何故それを、交む(つるむ)・交る(さかる)と表記するのかについて、どの歳時記にも説明は書かれていません
交む(つるむ)という表記は
「連ぶ(つるぶ)」が「交ぶ(つるぶ)」に転じ、更に「交む(つるむ)」に転じた言葉ともされます 1)
「連ぶ(つるぶ)」や「交ぶ(つるぶ)」は、連れ立つ、矢を並べて打つなどの意味です
更に転じた「交む(つるむ)」が、なぜ動物の交尾という意味に変わるのでしょう?
「交る(さかる)」に関しては、語源は見つかりませんでした
交む(つるむ)・交る(さかる)を使った季語は、他にもあります
角川大歳時記では
「獣交む(けものつるむ)」
「獣交る(けものさかる)」が掲載されています
このように季語が紹介されていることから
俳句作品の中では「鳥交る(さかる)」、「雀交る(さかる)」という表記が頻繁に使われます
ただ、このような表記は俳人以外で使っている人は見かけません
一般の書物にも、辞書や辞典にもこの表記は見られません
歳時記の中に作品が掲載されている分には、季語紹介の欄に「鳥交る(さかる)」と読み方が書いてあるので、読者も読めると思います
ただ、単独でどこかの本や句集に「鳥交る○○○○○○○○」と書いてある場合、読者は「鳥交る(まじる)」と読むと思います
そうなれば「鳥が他のものの中へ入っていったのだな」という意味で捉えるでしょう
作者の伝えたいことは変わってしまいます
鳥交む(つるむ)・交る(さかる)
獣交む(つるむ)・交る(さかる)という漢字表記を使う場合は
ご自身でも一度確認をしてから使った方がよいと思います
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1)中島利一郎.卑語考.(1957).雄山閣.
2)角川学芸出版.(2006).角川俳句大歳時記.角川書店.
3)現代俳句協会.(2004).現代俳句歳時記.学研プラス.
4)角川書店.(2019).合本俳句歳時記.KADOKAWA.