「日の夏」とは
俳句の世界には、一見すると少し不思議な言葉の季語が隠されています。
夏の季語「日の夏(ひのなつ)」もその一つかもしれません。
歳時記によっては、「夏の日(なつのひ)」、つまり夏の太陽と同じ意味だと説明されています。 1.2)
しかし、この言葉は、私たちの日常で「夏の太陽」を指す言葉として使われることはほとんどありません。
一体、「日の夏」はどんな言葉なのでしょうか?
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「日の夏」が持つ二つの顔
歳時記では、「夏の日」の関連季語として「日の夏」を掲載しているのですが、これは、「夏の日」を倒置したもので、「照りつけるような、強烈な夏の太陽」を表現するために使われたと考えられます。
言葉を倒置することで、単に「夏の太陽」と言うよりも、より強い印象を与え、読者の想像力をかき立てる効果があります。
しかし、この言葉にはもう一つの顔があります。
「日の夏」という言葉は、しばしば「過ぎし日の夏」や「少年の日の夏」といった、思い出の中の夏を表現するために使われることがあります。
季語の裏側を深掘りする面白さ
なぜ「日の夏」が二つの異なる意味で使われるのでしょうか?
それは、季語が、辞書のように一つの決まった意味を持つ言葉ではないからです。季語は、作者の感性や、言葉の持つ響きによって、その意味や役割を変えていきます。
「日の夏」は、もともと「夏の太陽」を強調するために使われた言葉が、時代を経て「思い出の夏」という、より情感的な意味も持つようになったと考えることができるでしょう。
もしあなたが「日の夏」を詠むなら、その言葉にどんな意味を託しますか?
- 燃えるような夏の太陽の光を表現するのか
- それとも、遠い昔の夏の記憶を呼び起こすのか
季語の背景を深く探求することで、言葉は単なるルールではなく、あなたの感性を表現するための、より豊かな道具になります。
ぜひ、あなたも季語の奥深い意味を探求してみてください。
夏の季語一覧 >>>
1) 角川学芸出版.(2006).角川俳句大歳時記.角川書店.
2) 日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.
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