秋の季語の謎!「田のむの雁(たのむのかり)」の「田のむ」とは

秋の季語に、渡り鳥の「雁(かり)」があります。歳時記によっては、関連季語に「田のむの雁(たのむのかり)」という、少し不思議な言葉が載っていることがあります。 1)

「田のむ」とは、一体どういう意味なのでしょうか?

「田のむ」に隠された、言葉の遊び

この言葉は、元々「田の面(たのも)」、つまり「田んぼの水面」や「田んぼの表面」を意味する言葉が、音変化して「たのむ」となったものです。

では、なぜ「田の面」をわざわざ「田のむ」と書くのでしょうか?

それは、「頼む(たのむ)」という言葉に掛けて、言葉遊びを楽しむためです。

例えば、古くから、雁は「田んぼの水面にいる雁」を指す言葉として、多くの和歌で「頼む」という言葉にかけて詠まれてきました。 2)

み吉野のたのむのかりもひたぶるに君が方にぞよると鳴くなる
(吉野の田んぼの水面にいる雁も、ひたむきにあなたが来るのを頼んでいるかのように鳴いているよ)

このように、「田んぼの表面にいる雁」と「頼む」という二つの意味を同時に持たせることで、言葉に奥行きとユーモアが生まれるのです。

季語を選ぶということ

もし、あなたがこの季語を詠むとき、「田の面の雁」と書けば、「田んぼにいる雁」という、より具体的な情景を伝えることができます。

一方、「田のむの雁」と書けば、言葉の響きや、「頼む」という言葉の連想から、句に深い情感や言葉の遊び心を加えることができます。

どちらの言葉を選ぶかで、あなたの句の世界観は全く変わります。

季語を学ぶことは、言葉の奥深さを知る旅です。言葉の持つ意味だけでなく、その裏に隠された言葉の遊びや、歴史を知ることで、あなたの俳句はもっと楽しく、豊かなものになるでしょう。



参考資料

1)日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.
2)小学館.(2006).精選版日本国語大辞典.小学館.




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