季語「うそ寒」の「うそ」とは?
「うそ寒(うそざむ)」という言葉は、秋の季語として知られていますが、その意味は単なる寒さだけでなく、心に感じる微妙な寒さや、物寂しい様子などを含んでいます。
この「うそ」は、「薄い(うすい)」という言葉が変化したもです。「薄い」が少し変化して「うそ」になった、と考えるとわかりやすいでしょう。
つまり、「嘘のように寒い」のではなく、「ほんの少し寒い」というニュアンスです。
「うそ寒」が伝える、秋の「しんみり」とした空気
「うそ寒」は、単に気温が低いというだけでなく、心に感じる微妙な寒さや物寂しい雰囲気を表現できる、とても味わい深い言葉です。
- 秋の澄んだ空気の中で、肌に感じるわずかな冷たさ。
- 日が短くなって、何となく感じる寂しさ。
そんな、秋の「しんみり」とした情景や気持ちを、ギュッと凝縮して表現する時に使われます。
「うそ寒」は、心の状態も表せる
俳句の世界では、「うそ寒」は、景色だけでなく、心の状態を表す言葉としても使われます。
例えば、「何となく、うそ寒い気持ちだ」というように…
- 心が寒々(さむざむ)としている様子
- 物足りなさ
- ちょっとした不安
など、言葉にしにくい微妙な感情を表現するのにも役立ちます。
「うそ寒」を使うだけで、読者に「ああ、そういう感じ、わかるな」と共感してもらえるのです。
「うそ寒」の活用例
「うそ寒」は、俳句の世界でもよく使われる季語の一つです。プロの俳人がどう使っているか見てみましょう。
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| うそ寒くゴルフ談議の辺に侍すも 草間時彦 | 草間時彦の句集(Amazon) >> |
| うそ寒といひつゝ字引ひきて見る 星野立子 | 星野立子の句集(Amazon) >> |
| うそ寒の眉雪ちらつく水鏡 秋元不死男 | 秋元不死男の句集(Amazon) >> |
歳時記では「うそ寒」という単語が掲載されていますが、「うそ寒」は「うそ寒い」の語幹から転じた言葉ですので、例句に挙げたように「うそ寒き」「うそ寒く」といった使い方もされます。
このような使い方もマスターすると、より豊かな表現が可能になります。
まとめ
「うそ寒」の「うそ」は「薄(うす)い」から来た言葉で、「ほんのりとした寒さ」という意味。
自然の描写にも、心の描写にも使える、秋の情緒たっぷりの素敵な季語です。ぜひ、あなたも「うそ寒」を使って、秋の風景や気持ちを表現する俳句にチャレンジしてみてください!
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