季語「うそ寒」の「うそ」とは?
「うそ寒(うそざむ)」という言葉は、秋の季語として知られていますが、その意味は単なる寒さだけでなく、心に感じる微妙な寒さや、物寂しい様子などを含んでいます。
「うそ」は「薄い」が変化した言葉で、「薄ら寒い」という意味になります。つまり、「嘘のように寒い」のではなく、「ほんの少し寒い」というニュアンスです。秋の澄み切った空気の中で、肌に感じるわずかな冷たさや、日差しが短くなった寂しさを表現する際に用いられます。
俳句では、「うそ寒」は自然の描写だけでなく、心の状態を表す言葉としても使われます。「何となく、うそ寒い気持ちだ」というように、心の寒々とした様子、物足りなさ、あるいは一抹の不安などを表現する際に用いられます。
「うそ寒」の活用例
「うそ寒」は、俳句の世界でもよく使われる季語の一つです。
うそ寒き日なり歩きてゐたりけり 岸田稚魚
うそ寒くゴルフ談議の辺に侍すも 草間時彦
うそ寒といひつゝ字引ひきて見る 星野立子
うそ寒の眉雪ちらつく水鏡 秋元不死男
歳時記では「うそ寒」という単語が掲載されていますが、「うそ寒」は「うそ寒い」の語幹から転じた言葉ですので、例句に挙げたように「うそ寒き」「うそ寒く」といった使い方もされます。
このような使い方もマスターすると、より豊かな表現が可能になります。