「茅花」は春の季語です
この関連季語に「茅花ぬく」を紹介している歳時記があります 1.2)
「新版角川俳句大歳時記」の考証には
万葉集・巻八・春相聞「茅花抜く浅茅が原のつほすみれ今盛りなりわが恋ふらくは」とあるので
「茅花ぬく」は「茅花抜く」という漢字表記のようです
そうなると一つの疑問が生じます
「茅花見る・摘む・切る・活ける・飾る」といった行為は普通、季語にならないのに
なぜ「茅花を抜いた」という行為は季語になるのでしょうか?
「○○枯る」のような動詞自体が季語になっているもの
鶯の初鳴きのような、動詞によってその季節を特定するものでしたら動詞は必要ですが
「茅花抜く」の「抜く」という動詞に、そのようなものは感じられません
一方、「俳句季語よみかた辞典」では「茅花抜く」について
「葉の伸びぬ先に、とがった苞につつまれて白色の小花をつける。のち苞がほうけて、穂絮を飛散すること」
と説明をしています
「穂絮を飛散すること」が「抜くこと」のようですが、意味が分かりません
「茅花抜く」に似た言葉に、「茅花抜(つばなぬこ)」があります 3.4)
「ぬこ」は「ぬこう」の変化したもので、鬼ごっこの一種
季語ではなく、遊びの一種です
このような言葉があると
季語の「茅花抜く」を、連用形の「茅花抜(つばなぬき)」で使ってしまうと
鬼ごっこの「茅花抜(つばなぬこ)」と誤認する可能性があります
困った問題です
「茅花抜く」の「抜く」は、どのような意味なのでしょうか
この言葉は必要なのでしょうか
季語は「茅花」だけで十分な気がしてしまいます
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1)角川書店.(2022).新版角川俳句大歳時記.KADOKAWA.
2)日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.
3)小学館.(2006).精選版
日本国語大辞典.小学館.
4)新村出. (1991). 広辞苑. 日本: 岩波書店.