風車まはり消えたる五色かな 鈴木花蓑
「まはり」は、「まわり(回り)」の旧仮名
風車の色が、風で回った瞬間に消えた、という俳句
一瞬の光景を上手く切り取った作品
客観写生が良い
風車が静止している状態から風を受けて回り出し、その鮮やかな五色が消えるという一瞬を、忠実に描写している
無駄な表現がないため、その様子を鮮明に想像することができる
静止から動きへの変化という極めて短い瞬間を捉えている点もすごい
風車といえば、静止している状態や、回っている状態を目にすることが多いため、俳句にしようとすると、その状態を詠んでしまいがちだが、この句では、風車が止まっている状態から風を受けて回り始める、その一瞬に焦点を当てている
同じように瞬間を切り取って俳句を作れるか、というと、自分にはできない
今回の景は、「風車の色が回って消えた」場面だが
この語順のまま俳句にすると、単なる事実の説明に留まり、読者の想像力は限定されてしまったかもしれない
これを回避するために、「色」を主体とし、「まわり消えたる五色」という表現にしている
語順を変えることで、読者は視覚的に色を認識しやすくなっている
風車という題材は、それ自体では詠むべき要素が少ない
多くの場合、他の事物との取り合わせによって俳句が作られる
例えば次のように
父がまづ走つてみたり風車
素泊りの煙草が匂う風ぐるま
街角の風を売るなり風車
しかし、今回の句は、風車そのものが持つ「動き」と「色」に注目し、それ自体を詠んでいる
これもまた、簡単にできることではない
作者である鈴木花蓑の作品で有名なものに、次の句がある
大いなる春日の翼垂れてあり
花疲れ流れについてゆくとなく
作者の観察眼が鋭すぎるのか、詩的感性の豊かすぎるのか
表現が巧みすぎて、嫉妬してしまう
鈴木花蓑の句集、勉強になると思う
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風車まはり消えたる五色かな
