歳時記の魅力:俳句から広がる、暮らしと自然のガイドブック
日本の四季の美しさを、言葉で感じたことはありますか?
「歳時記」は、まさにそんな体験をさせてくれる、特別な一冊です。
俳句を作る人のためのツールと思われがちですが、実は俳句を詠まない人にとっても、自然や季節の移ろいを深く感じさせてくれる、素晴らしいガイドブックになります。
この記事では、歳時記がどんな本なのか、どうやって読むのか、そしてどんな楽しみ方があるのかを分かりやすくご紹介します。
歳時記の読み方
歳時記は「さいじき」と読みます。
これは、歳(一年)の時を記した書物という意味からきています。
その名の通り、四季折々の事物が掲載されています。
歳時記ってなに
歳時記とは、日本の四季を彩るさまざまな風物(季語)をまとめた本です。季節ごとの植物、動物、行事、風景などが一覧になっており、それぞれの季語を使った俳句の例も掲載されています。
俳句の世界では欠かせない存在ですが、俳句のルールを知らなくても、ただページをめくるだけで、春夏秋冬の豊かな情景が目に浮かび、まるで季節の旅行をしているような気分を味わえます。
歳時記と季語の違い
歳時記(さいじき)と季語(きご)の両社は、密接な関係にありますが、その意味は明確に異なります。
季語の定義 
季語は、俳句に特定の季節感をもたらす言葉そのものを指します。たとえば、「桜」「雪」「月」など、自然、生活、行事などに関する言葉がこれにあたります。
歳時記の定義 
歳時記は、それらの季語を網羅的に分類し、一つひとつに意味を加えた書物です。これは、季語を集めて体系化した「辞書」あるいは「百科事典」のような役割を果たします。
歳時記の中身を見てみよう
歳時記は、以下のように整理されています。この分類を知っておくと、読みたい情報にたどり着きやすくなります。
季節の分類
季節は一般的な「春夏秋冬」に加えて、「新年」が独立した季節として扱われます。
新年の季語は、お正月ならではの特別なものが多いためです。
季節を月ごとに見ると次のようになります。
一般的なな月日と少しずれているのは、旧暦の考え方がベースになっているためです。

事物の分類
それぞれの季節は、さらに詳しいジャンルに分かれています。
歳時記によって多少の違いはありますが、一般的には以下の7つの分類です。

このように細かく分類されているおかげで、「春の植物の季語を探したい」といったときでも、目当ての季語にすぐたどり着けます。
歳時記の使い方
歳時記は、読む目的によってさまざまな使い方ができます。
俳句を作る人へ
歳時記は、俳句作りの心強いパートナーです。
- 季語を探す:まずは歳時記をパラパラとめくり、心惹かれる季語を見つけましょう。
 - 句作のヒントを得る:季語のページには、その季語が持つ背景や、音数の違う関連語が載っています。例えば、「薔薇」のページには「いばら」や「ばら」といった類語も記載されており、五七五の音数調整に役立ちます。
 - 鑑賞の幅を広げる:たくさんの俳句が掲載されているので、先人たちの句を参考にしながら、自分の句の表現を磨くことができます。
 
俳句を詠まない人へ
俳句を詠まない人でも、歳時記は十分に楽しめます。
- 読み物として楽しむ:各季語の解説文を読むだけでも、新しい発見がたくさんあります。道端で何気なく見ていた花の名前や、空模様に名前があることを知ると、自然の見え方が変わってきます。
 - 自然を探しに行く:「歳時記に載っているあの植物を実際に見てみたい」と、散歩に出かけるのもおすすめです。歳時記を片手に街を歩けば、いつもの風景が新鮮に感じられるはずです。
 
俳句の鑑賞に
新聞や雑誌などで俳句を見かけるとき、意味が分からない季語に出会うこともありますよね。
例: 「じりじりと 山の寄せくる 油照り」
この「油照り」って何だろう?と思ったときは、歳時記で調べればすぐに意味が分かります。油を塗ったようにギラギラと暑く照りつける夏の太陽のことです。歳時記があれば、俳句をより深く理解し、鑑賞の幅を広げることができます。
歳時記の使い方
歳時記は、俳句を作る際に非常に役立つツールです。ここでは、具体的な使い方をいくつか紹介します。
- 季語を調べる: 俳句を作ろうと思ったものの、どのような季語を使えば良いか分からないとき、歳時記は心強い味方です。例えば、秋の景色を詠みたいと思ったら、歳時記の「秋」のページを開いて、気になる季語を探してみましょう。「紅葉」「月」「鰯雲」など、さまざまな季語が見つかります。
 - 季語の解説を読む: 歳時記には、それぞれの季語の由来や、俳句での使い方、背景などが詳しく書かれています。例えば「桜」の項を読むと、桜が持つ「散り際の美しさ」や「はかなさ」といった日本的な美意識を再確認できます。
 - 例句を読む: 歳時記には、その季語を使った有名な俳人たちの俳句が載っています。これを読むことで、どのように季語を活かせばよいかのヒントを得られます。自分では思いつかなかった表現や視点を発見できるかもしれません。
 - 創作のヒントにする: 歳時記は、季語の辞典としてだけでなく、創作のインスピレーションを得るための読み物としても楽しめます。季節の移ろいを言葉で追体験することで、新たな俳句の着想が生まれるでしょう。
 
歳時記でおすすめの本
初めて歳時記を購入する方には、選びやすい入門書や、初心者向けの歳時記がおすすめです。
- 『角川俳句大歳時記』 KADOKAWA 
伝統的な歳時記の定番として知られています。信頼性の高い季語の解説と豊富な例句が魅力です。少し専門的ですが、一冊持っておいて損はありません。
Amazonで見る >> - 『オールカラー よくわかる俳句歳時記』ナツメ社
季語の解説が分かりやすく、写真も掲載されているため、若手俳人や初心者にも人気です。
Amazonで見る >> - 『入門歳時記』KADOKAWA
季語の選定が吟味されており、読みやすい構成が特徴です。季語の解説が丁寧で、俳句初心者でも安心して使えます。
Amazonで見る >> 
これらの歳時記は、書店やオンラインストアで手軽に購入できます。
自分にとって読みやすいものを選ぶのも良いでしょう。
子供向けの歳時記
大人だけでなく、子供向けの歳時記も出版されています。子供向けの歳時記は、イラストや写真が多く使われており、季語をより直感的に理解できるよう工夫されています。
- 『子ども歳時記』小学館
季節ごとの行事や風物詩が、写真とともに紹介されています。俳句を詠むだけでなく、日本の豊かな四季を学ぶ絵本としても楽しめます。
Amazonで見る >> - 『まど・みちお童謡歳時記』講談社
あたたかなイラストを通して、季節の言葉に触れることができます。昔からある日本の自然の言葉を楽しむことで、自然と語彙が増えると思います。
Amazonで見る >> 
子供向けの歳時記は、俳句を教えるだけでなく、言葉や季節への興味を育むきっかけになります。親子で一緒に読んでみるのもおすすめです。
歳時記のアプリ
最近では、スマートフォンやタブレットで手軽に使える歳時記アプリも増えています。いつでもどこでも季語を調べられるので、外出先でふと思いついた俳句を詠む際にも便利です。
- 「歳時記カレンダー+」アプリ
二十四節気七十二候や月齢のほか、その日の日本の行事なども知らせてくれるアプリです。日々の季節の移り変わりを実感できます。
Google Play のアプリ >>
App Store のアプリ >> - 「角川 合本俳句歳時記」アプリ
書籍でも有名な「角川 合本俳句歳時記」のアプリ。季語の検索はもちろん、季節ごとの季語一覧や例句の閲覧が可能です。有料版ですが、本よりも早い検索ができます。
Google Play のアプリ >> 
アプリの利点は、紙の歳時記に比べて持ち運びが楽なこと、検索機能が充実していることです。一方で、紙の歳時記をぱらぱらとめくりながら、偶然の出会いを楽しむという醍醐味は、紙ならではのものです。紙とアプリをうまく使い分けて、俳句ライフを豊かにしていきましょう。
歳時記検索サイト
インターネット上には、無料で使える歳時記検索サイトも多数存在します。これらのサイトは、手軽に季語を調べたいときに非常に便利です。
- 「きごさい歳時記」
非常に多くの季語が収録されており、季語ごとに丁寧な解説と例句が掲載されています。キーワードでの検索機能も充実しているため、目的の季語にすぐにたどり着くことができます。
サイトに行く >> - 「俳句季語辞典」
季語の単語検索だけでなく、季節ごとの季語、分類ごとの季語を表示させることができます。
サイトに行く >> - 「季語検索」
季語の単語検索機能があり、季語の解説とともに、子季語が表示されます。子季語をさらに検索することで、季語の微妙な意味の違いも知ることができます。
サイトに行く >> 
これらのサイトは、スマートフォンやパソコンからアクセスできるため、場所を選ばずに利用できます。しかし、サイトによっては情報の信頼性がまちまちである場合もあるため、本格的に俳句を学びたい場合は、信頼できる出版社が発行している書籍の歳時記を併用することをおすすめします。
こちらの記事で、より詳しく、インターネット上の無料歳時記を紹介しています。
俳句の疑問に関する記事
- 俳句の『漢字』の疑問
 - 俳句の『切れ字』とは
 - 俳句の『取り合わせ』とは
 - 俳句の『句切れ』とは
 - 俳句の『自由律俳句』とは
 - 俳句の『有季定型』とは
 - 昔の俳句で見られる「く」「ぐ」とは
 - 昔の俳句で見られる「ゝ」「ゞ」「ヽ」「ヾ」とは
 - 「俳句結社」の内容から探し方まで
 - 俳句の『季重なり』とは
 - 俳句の『季語』とは
 - 俳句の『字余り・字足らず』とは
 - 俳句の『吟行』とは
 - 「俳句・川柳・短歌」の違い
 
「四季を語る季語」
24000語の季語が掲載され、季語の全てに丁寧な解説が書かれている電子書籍。
アマゾンプライム会員は、「春版」が無料で読めます(期間限定)
Kindle Unlimited会員は、「春夏秋冬+新年」の全てが無料で読めます
  
  
  
  
