季語の「冬障子」に「冬」は必要?

 

季語の一つに「障子(しょうじ)」があります

「障子」は木枠の片側に和紙を張った建具

寒さや風を遮るために用いられるため冬の季語とされます

 

この「障子」の関連季語に「冬障子」が掲載されています 1

「障子」は冬の季語ですが、何故「冬」が付いているのでしょうか?

 

単なる推測ではありますが、次のような流れで「冬」が付いたのではないでしょうか

 

①障子は無季であった

   ↓

②季節を出すために「春障子・冬障子」として使い出す

   ↓

③障子が冬の季語となる

   ↓

④昔使われた「春障子・冬障子」も、季語になる

 

 

例えば、明治の「明治歳時記栞草」では、障子は季語ではなく居住用の言葉として紹介されています 5

この頃の俳句は、障子を無季で使っています

水仙や白き障子のともうつり (出版年不明)  2

小春日や障子に移る松の影    (25)       3)

 

 

大正には、次のように障子に冬や春を冠して使う俳句が見られるようになります

手紙来ず暮れてしまひぬ冬障子  (大正7) 6

時に濃き雀の影や春障子     (大正12) 4

 

 

昭和には、歳時記に「障子」が季語として採用されています

「大成歳時記」に「障子張る」が掲載されています  (昭和27

「俳句歳時記 冬」に「障子」が掲載されています  (昭和348

 

 

明治・大正よりも前に「障子」が冬の季語としてあれば、冬障子として使うはずがないので

最初に無季の障子を「春障子・冬障子」として使い

その後に、「障子」が冬の季語になった、と考えるのが自然の気がします

 

 

現在は「障子」が冬の季語ですので、「冬障子」のように「冬」をつける必要はありません

誤って使わないように注意しましょう

 

 


 

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1) 日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.

2) 佐藤紅緑.俳句作法 俳句作法.(出版年不明).大日本俳諧講習会.

3) 四季発句金玉集
3.(25).和歌山発句互撰会.

4) 早稲田文学 [2] (213) 8月號.(大正12.早稲田文学社

5) 三森幹雄.明治歳時記栞草.新選俳諧 中.(15).錦城書楼.

6) 筆之友 (223).1918.書道奨励協会.

7) 宮田戊子.大成歳時記.昭和新修.(昭和2.星文閣.

8) 平凡社俳句歳時記編集部.俳句歳時記 冬.1959.平凡社.



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