俳句の切れ字「けり」をマスターして、表現の幅を広げませんか?
たった一つの言葉「けり」を加えるだけで、あなたの俳句作品は奥深く、そして美しくなります。
この記事では、初心者の方にもわかりやすく、切れ字「けり」の意味、使い方などを解説します。
初心者向けの丁寧な解説ですので、あなたも今日から俳句の中に使うことができます。
切れ字「けり」の意味
俳句では、切れ字の「けり」がよく使われます
赤い椿 白い椿と 落ちにけり 河東碧梧桐 (あかいつばき しろいつばきと おちにけり) | 河東碧梧桐の句集 (Amazon) >> |
上記の俳句では、文末の「落ちにけり」という所で「けり」が使われています
意味は、その事実に気がついたことに深い感動をしたもので、「…たのだなあ」「…たなあ」となります
一方、切れ字の「けり」は、過去の出来事を回想的に表して「…たということだ」「…たそうだ」というように使われることもあります
例えば、次の俳句がそのような意味で使われています
いくたびも 雪の深さを 尋ねけり 正岡子規 (いくたびも ゆきのふかさを たずねけり) | 正岡子規の句集 (Amazon) >> |
つまり、切れ字の「けり」は
①その事実に気がついた感動
②過去の出来事をしみじみと回想している
この2つの意味がある、ということです
切れ字の「けり」を使った俳句を鑑賞するときは、作者がどんな気持ちであったのか
作者のその心の動きを感じながら鑑賞をすると、より感動を感じることができます
他にも、切れ字の「けり」を使った俳句がありますので、見ていきましょう
作者の感情を感じながら鑑賞してみてください
切れ字「けり」を使った俳句
切れ字の「けり」を使った他の俳句を紹介します
そのなかに 芽を吹く榾の まじりけり 室生犀星 (そのなかに めをふくほだの まじりけり) | 室生犀星の句集 (Amazon) >> |
つまみたる 山を春野に 下ろしけり 飯田晴 (つまみたる やまをはるのに おろしけり) | 飯田晴の句集 (Amazon) >> |
とらへたる 柳絮を風に 戻しけり 稲畑汀子 (とらへたる りゅうじょをかぜに もどしけり) | 稲畑汀子の句集 (Amazon) >> |
どうでしょうか、作者の心の動きを感じることはできたでしょうか
では次に、実際に切れ字の「けり」を使って俳句を作る際には、どこに置けば良いのかを説明します
切れ字「けり」を置く場所
切れ字の「けり」は、俳句のどこに置いても構わないとされています
〇〇〇けり/〇〇〇〇〇〇〇/〇〇〇〇〇
〇〇〇〇〇/〇〇〇〇〇けり/〇〇〇〇〇
〇〇〇〇〇/〇〇〇〇〇〇〇/〇〇〇けり
このように、上五、中七、下五のどの部分に置いても構いません
しかし、実際に多くの俳句を見てみると、「けり」が最も多く使われているのは、下五の最後です
上で紹介した俳句も全て下五の最後に「けり」が置かれています
俳句を始めたばかりの方は、まずは「けり」を下五の最後に置くことを意識すると、自然な俳句を作ることができるでしょう
続いては、切れ字の「けり」を俳句で使う際に、どのような言葉と組み合わせて使うと良いのか、見ていきましょう
切れ字「けり」の接続
切れ字の「けり」は、通常、動詞の連用形につけて使います
誘ひけり | 動詞の連用形+「けり」 |
流れけり | 動詞の連用形+「けり」 |
このルールを意識して、様々な動詞と組み合わせて使ってみることで、切れ字の「けり」の使い方が自然と身につくはずです
切れ字「けり」の使い方をマスターすることで、あなたの俳句は、より豊かな表現になるはずです
動詞の連用形+「けり」で作られた俳句を紹介します。参考にしてください。
うごけばひかる 真夏の空を 怖れけり 川島彷徨子 (うごけばひかる まなつのそらを おそれけり) | 川島彷徨子の句集 (Amazon) >> |
けふの月 馬も夜道を 好みけり 村上鬼城 (きょうのつき うまもよみちを このみけり) | 村上鬼城の句集 (Amazon) >> |
すぐ帰る 若き賀客を 惜しみけり 能村登四郎 (すぐかえる わかきがきゃくを おしみけり) | 能村登四郎の句集 (Amazon) >> |
「に」+「けり」で使うこともある
切れ字の「けり」は、動詞の連用形+「けり」で使われると説明をしましたが
動詞の連用形+「に」+「けり」として使うこともあります
意味は、「…てしまったのだなあ」「…しまったことだ」という、気づきの詠嘆となります
動詞の連用形+「に」+「けり」で作られた俳句も紹介しますので、参考にしてください。
滝の上に 水現れて 落ちにけり 後藤夜半 (たきのうえに みずあらわれて おちにけり) | 後藤夜半の句集 (Amazon) >> |
くろがねの 秋の風鈴 鳴りにけり 飯田蛇笏 (くろがねの あきのふうりん なりにけり) | 飯田蛇笏の句集 (Amazon) >> |
降る雪や 明治は遠く なりにけり 中村草田男 (ふるゆきや めいじはとおく なりにけり) | 中村草田男の句集 (Amazon) >> |
その他の「切れ字」の記事
「俳句には、「けり」以外にも「や」や「かな」など、様々な切れ字があります
これらの切れ字は、俳句に奥行きと深みを与えてくれる大切な要素です
それぞれの切れ字が持つ特徴を理解することで、より豊かな表現の俳句を作ることができます
「や」や「かな」については、別の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください
「切字」が深く理解できる本
切字が生じさせる余白の様々な洞察が書かれています
読んでいて、「なるほど」と何度も思いましたし
読んだ後に、いままでに無かった視点で切字を使えるようになりました
切字の効果がいまいち分からない、という人にはお勧めです
切字の理解もできますし、切字の新しい視点が得られます
