俳句を詠むために歳時記を開いていると、見慣れない言葉に出会うことがあります。
例えば、夏の季語「暮れかぬる」。
この「かぬる」って、一体どんな意味だろう?と辞書で調べても、なかなか見つからないことがあります。
実は、そこには俳句に特有の「言葉のルール」が隠されています。
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辞書に載っていないのは「形」のせい?
私たちが普段使う辞書に載っている動詞は、「終止形」という、言葉の基本形です。例えば、「書く」「読む」「走る」などがこれにあたります。
しかし、歳時記に載っている季語の中には、「連体形」という、少し違った形で掲載されているものがあるのです。
「暮れかぬる」の「かぬる」は、「兼ぬ(かぬ)」という言葉の連体形です。「~しかねる」という言葉のように、「~することが難しい」「~しきれない」といった意味を持ちます。
つまり、「暮れかぬる」は、「日が暮れることができない」「日が暮れそうで暮れない」という、夏の日の長さを表現しているのです。
「~かぬる」の他にも、「~ながるる」や「~かるる」など、語尾が「る」で終わる季語には、連体形で掲載されているものが多くあります。
季語の「探し方」をマスターしよう
もし、歳時記で語尾が「る」の季語に出会って、辞書を引いても見つからなかったら、次のように試してみてください。
1. 語尾の「る」を消してみる
- 例:「暮れかぬる」→「暮れかぬ」
- 例:「流れながるる」→「流れながる」
2. 古語辞書で「る」を消した言葉を引いてみる
- 「かぬる」であれば「かぬ」で引く。
- 「ながるる」であれば「ながる」で引く。
こうすると、探している言葉が見つかることが多くあります。
ちなみに、古語辞書で引く理由は、季語が昔の言葉で書かれていることが多いからです。今回の「かぬる」も、昔の言葉です。
歳時記は、言葉の宝庫です。少し不思議な言葉に出会ったときは、「なぜ?」と疑問を持ち、その言葉のルーツをたどってみてください。
その探求が、あなたの俳句をさらに豊かなものにしてくれるでしょう。
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