「旱(ひでり)」を歳時記で調べると、旱の他に日照草や大旱といった季語も紹介されています
聞きなれない季語であるため、初めのうちは戸惑ってしまうのではないでしょうか
ここでは、初めて目にする季語でもすぐ使えるように、旱に関連する季語とそれらの意味を紹介します
意味を理解して使えるようになると、俳句の幅も広がるはずです
ちなみに、「旱」とだけ言った場合、俳句では夏の季語になります。秋や冬にみられる旱は「秋旱」「冬旱」というように季節を冠して呼びます
夏の旱
旱(ひでり)
雨が降らずからからに乾くこと
太平洋高気圧に覆われて、連日雨が降らずに日が照りつける
旱魃とも言いい、地面は渇ききって草木は枯れてしまう
農林災害はもちろん、人々の飲料水にも深刻な打撃を与える
| 住み古りて封書一通くる旱 吉田成子 | 吉田成子の句集(Amazon) >> |
| 大海のうしほはあれど旱かな 高浜虚子 | 高浜虚子の句集(Amazon) >> |
旱魃(かんばつ)、干ばつ(かんばつ)
旱とほぼ同義であるが、干ばつは暖候期の農作物の干害をさすことが多い
昔は主として農業災害のみを意味していたが、近年は農業災害の方は灌漑(かんがい:水路を作って田畑に必要な水を引き、土地をうるおすこと)の発達のため少なくなりつつあり
| 車窓より拳現われ旱魃田 金子兜太 | 金子兜太の句集(Amazon) >> |
旱害(かんがい)
日照り続きのため、農作物などが受ける被害。
| 旱害に遠く消耗病院あり 藤木清子 | 藤木清子の句集(Amazon) >> |
旱空(かんぞら)、旱天(かんてん)
日照り続きで長い間雨が降らないこと
日照りの空
大旱(たいかん)、おおひでり
ひどいひでり
| 人であることにいきつく大旱 森下草城子 | - |
| 大旱の赤牛となり声となる 西東三鬼 | 西東三鬼の句集(Amazon) >> |
旱年(ひでりどし)、日照年(ひでりどし)
ひでりの年。雨の少ない年。旱魃(かんばつ)の年。
旱畑(ひでりばたけ)
日照りで干からびてしまった畑
旱草(ひでりぐさ)、日照草(ひでりぐさ)
日照りにより干からびた草
| 一羽翔ち一羽残れる旱草 境野大波 | 境野大波の句集(Amazon) >> |
旱雲(ひでりぐも)、日照雲(ひでりぐも)
夏の旱(ひでり)の頃によく出る雲。特に、旱の先触れとしての朝の雲。
旱星(ひでりぼし)
さそり座の星の中央部に赤く光る一等星(アンタレス)を旱星とも言う。夏の南の空に見ることができる。名の由来はひでり続きの夜に見えることから。
この旱星は他にも色々な名称を持っています。興味のある人は「四季を語る季語 夏版」に掲載されています。
| 墜ちてくるイカロスの目の旱星 小橋柳絮 | 小橋柳絮の句集(Amazon) >> |
| 悪路王(アテルイ)の首に無辺や旱星 佐怒賀正美 | 佐怒賀正美の句集(Amazon) >> |
間違えやすい季語 -旱梅雨-
旱梅雨(ひでりづゆ)
梅雨に入っても晴天が続いて雨が少ないことを旱梅雨と言います。ですので、旱梅雨は梅雨時期の季語で、旱の時期の季語ではありません。
| ビニールの紐丈夫なり旱梅雨 山田喜美 | 山田喜美の句集(Amazon) >> |
| 画面指すだけの問診旱梅雨 黒沢弘行 | - |
秋の旱
秋旱(あきひでり)
立秋を過ぎてからも長期間の晴天により、水が枯れてしまうこと。農作物などにも被害が及ぶため、農家にとっては深刻。通常秋は、秋雨前線や台風などの影響で雨が多いが、太平洋高気圧の勢力が強いと晴天が長く続く。
| 秋旱掘つても穴にならぬなり 丸山敦子 | 丸山敦子の句集(Amazon) >> |
| 蘿蔔の嫩葉の露や秋ひでり 西島麦南 | 西島麦南の句集(Amazon) >> |
秋の旱魃(あきのかんばつ)
秋に長期間雨が降らず田畑が干上がること。
冬の旱
冬旱(ふゆひでり)
旱といえば夏だが、冬の日本の太平洋側は、一年のうちで雨量が 最も少なくなり旱魃になりやすい
水不足のために生活に不便を 感じたり野菜の出来が悪くなったりする
| 冬旱眼鏡を置けば陽が集う 金子兜太 | 金子兜太の句集(Amazon) >> |
| 唇甜めて英霊に礼す冬旱 石田波郷 | 石田波郷の句集(Amazon) >> |
寒旱(かんひでり)
寒中にひでりが続くこと
冬季晴天が続き、雨のないこと
旱の有名な俳句
旱の有名な俳句はいろいろありますが、個人的に好きな旱の俳句です
| 百日の旱に耐ふる川の音 廣瀬町子 | 廣瀬町子の句集(Amazon) >> |

