♦ 入門書
俳句つくりの入門書。基本的な内容が書かれているので、初心者にも分かりやすい
2択で学ぶ赤ペン俳句教室
2択で学ぶ赤ペン俳句教室
夏井 いつき
2017年出版
ヨシモトブックス
★★★☆☆
本書は、2つの俳句を並べて「どちらが良いでしょう?」と読者に問いかける、クイズ形式の入門書
シンプルな2択問題のため、初心者でも気負わずにページをめくることができる
「どちらがより効果的な表現か」を自分なりに考えた上で夏井先生の解説を読めるため、ゲーム感覚で楽しみながら、自分の「俳句を見る目(鑑賞力)」が今どれくらいあるのかを腕試しできる
さらに本書の素晴らしい点は、2択の正解を発表して終わりではないところ
「選ばれた句も、ここを直せばもっと良くなる」という一歩進んだ添削アドバイスまで網羅されているため、自分の句をブラッシュアップする(推敲する)ための実践的な勉強にもなる
決定版俳句入門
決定版俳句入門
「俳句」編集部
2012年出版
角川学芸出版
★★★★☆
本書は、雑誌「俳句」編集部が総力を挙げ、俳句の基本から実作、鑑賞に至るまでのエッセンスを体系的に網羅した、まさに「決定版」の名にふさわしい一冊。
構成は極めて明快。
第1章「基礎篇」で定型や季語、切れ字の効果といった俳句の骨組みを学び、第2章「実作篇」では題材の発見から五感の活用、写生、そして推敲・添削の技術へと実践的に歩を進める。
さらに第3章「鑑賞篇」では芭蕉をはじめとする名句の世界を紐解くなど、初心者がステップアップしていくための道筋が緻密に敷かれている。
特筆すべきは、その解説の深み。
文中には松尾芭蕉をはじめとする先達が残した言葉が随所に織り込まれており、私自身、「自分が今学んでいるこの五・七・五の思想は、何百年もの時を超えて受け継がれてきた伝統なのだ」という歴史の重みに、深い感動を覚えた。
本書の素晴らしいところが、伝統派から現代派まで、結社の垣根を越えて集結した4人の第一人者(有馬朗人氏、稲畑汀子氏、宇多喜代子氏、鷹羽狩行氏)による共同監修という点。
特定の流派や思想に偏ることなく、日本の俳句界が総意として認める「これさえ押さえておけば間違いない」という俳句の王道・骨法が、非常に分かりやすく整理されている。
数ある入門書の中でも、時代を超えて信じられる一冊。
わかりやすい俳句推敲入門
わかりやすい俳句推敲入門
矢野 景一
2010年出版
角川学芸出版
★★★☆☆
本書は、自作の句をブラッシュアップするための具体的な方法論を提示した、極めて実践的な「推敲(すいこう)」の指南書。
俳句を作る上で、誰もが直面する大きな壁がある。それは「自分の作った句の、どこを直せばよいのか分からない」という問題。
作者自身は背景や感情をすべて知っているため、自作をどうしても主観的に見てしまい、問題点に気づくことができない。
本書はこの「主観の罠」を脱し、いかにして自分の句を「客観的」に検証するかという点に特化して解説を進めている。
提示されているチェックポイントは、極めて明確かつ具体的。
定型(五・七・五)にきちんと収まっているか
季語の選択は適切か、また季節に誤りはないか
「切れ」が効いているか、またそれをどう活かしているか
動詞や形容詞を使い過ぎて、言葉が重くなっていないか
文法的な間違いはないか、助詞の一つ一つを吟味したか
など
これらの項目を見て気づくのは、本書が「発想はどうか」「視点はユニークか」といった、個人の感性に左右される主観的な問い(正解のない問い)をあえて排除している点。
まずは、誰もが客観的に検証できる「技術的・構造的な不備」を徹底的に潰していく。この基本のチェックリストを通すだけでも、自作の句は見違えるほど洗練され、無駄のない姿へと削ぎ落とされるはず。
世に「他人の句を直す」添削本は数多く存在するが、「自分の句を自分で直す」ための推敲プロセスをここまで分かりやすく体系化した書物は決して多くない。
一段上のレベルを目指す実作者にとって、読んでおきたい一冊。
俳句実作入門講座4 「季語と切字と定型と」
俳句実作入門講座4 「季語と切字と定型と」
広瀬 直人
1996年出版
角川書店
★★★★☆
本書は、『俳句実作入門講座』の第4巻として刊行された、俳句の骨格とも言える「季語」「切字」「定型」の三要素に真正面から切り込んだ実践的な指導書。
タイトルの通り、この三つの重要テーマについて複数の実力派俳人がそれぞれの章を分担し、多角的な視点から論じているのが本作の最大の特徴。
一つのテーマに対して何章も割かれているため、入門書の域を超えた極めて深い議論が展開されている。
具体的に踏み込んでいる領域も実に実践的。
「季語」の項では、季語の持つ本意(本来の意味や本質)の理解から始まり、自らの句に最適な季語の選び方、そして効果的な置き所が丁寧に解説される。
「切字」の項では、単に句のどこで切るかという構造的な問題にとどまらず、切字がもたらす「省略」の美学や「詠嘆」の深まりといった、詩情の核心にまで迫っている。
「定型」の項では、五・七・五がもたらす揺るぎない安定感を基礎としながらも、あえてそれを崩す「字余り」がいかにして句に説得力をもたらすか、あるいは「句またがり」がどのような効用を生むかといった、中級者以上も唸る高度な技術論が紐解かれている。
これらの中身の濃さは、以下のような錚々たる執筆陣の顔ぶれを見れば納得がいくだろう。
♦ 実作本
様々な俳人の、俳句作りのコツに触れられる本
俳句実作入門講座1-6
第1巻『俳句への出発』(藤田湘子 編 / 1996.7)
第2巻『新しい素材と発想』(鷹羽狩行 編 / 1996.11)
第3巻『俳句表現の方法』(稲畑汀子 編 / 1997.3)
第4巻『季語と切字と定型と』(廣瀬直人 編 / 1996.9)
第5巻『旅と風景句』(上田五千石 編 / 1997.1)
第6巻『日常吟と自分史』(岡本眸 編 / 1997.5)
★★★★☆
角川書店から1990年代後半に刊行された『俳句実作入門講座』全6巻(藤田湘子、鷹羽狩行、稲畑汀子、廣瀬直人、上田五千石、岡本眸 編)は、実作の壁に突き当たっている中級者にとって最高の指南書。
本書には、いわゆる初心者のための「五七五の数え方」や「季語の基本」といった入門者向けの解説は一切書かれていない。
その代わり、総勢19人の著名な俳人たちが、第一線で培ってきた独自の創作論や実作のポイントを、それぞれの視点から深く掘り下げて解説している。
それぞれに異なる独自の俳句観が述べられているため、読み進めるうちに「この人の技法は腑に落ちる」「このアプローチは非常に面白い」と思える俳人に必ず出会える。
もし深く共感できる俳人が見つかれば、その人物の他の著書を読み漁ることで学びをさらに深められるし、もしその俳人が結社を主宰していれば、自らの活動の場を広げる道標にもなる。
まさに、単なる勉強の枠を超えて、生涯の師や新たな表現の場と出会うための「第一歩」となるシリーズと言える。
なかでも個人的に最も面白く、強い感銘を受けたのが第3巻『俳句表現の方法』(稲畑汀子 編)。
「写生」の向こう側にある、言葉をどのように選択し、どう組み立てて一句の調べ(リズム)へと昇華させるかという表現の核心が語られており、実作において最も実践的かつ刺激的な一冊であった。
日常の作句に行き詰まりを感じている人や、自分だけの表現スタイルを模索している人にこそ、ぜひ紐解いてほしい本。
俳句実作入門講座4 「季語と切字と定型と」
俳句実作入門講座4 「季語と切字と定型と」
広瀬 直人
1996年出版
角川書店
★★★★☆
本書は、『俳句実作入門講座』の第4巻として刊行された、俳句の骨格とも言える「季語」「切字」「定型」の三要素に真正面から切り込んだ実践的な指導書。
タイトルの通り、この三つの重要テーマについて複数の実力派俳人がそれぞれの章を分担し、多角的な視点から論じているのが本作の最大の特徴。
一つのテーマに対して何章も割かれているため、入門書の域を超えた極めて深い議論が展開されている。
具体的に踏み込んでいる領域も実に実践的。
「季語」の項では、季語の持つ本意(本来の意味や本質)の理解から始まり、自らの句に最適な季語の選び方、そして効果的な置き所が丁寧に解説される。
「切字」の項では、単に句のどこで切るかという構造的な問題にとどまらず、切字がもたらす「省略」の美学や「詠嘆」の深まりといった、詩情の核心にまで迫っている。
「定型」の項では、五・七・五がもたらす揺るぎない安定感を基礎としながらも、あえてそれを崩す「字余り」がいかにして句に説得力をもたらすか、あるいは「句またがり」がどのような効用を生むかといった、中級者以上も唸る高度な技術論が紐解かれている。
これらの中身の濃さは、以下のような錚々たる執筆陣の顔ぶれを見れば納得がいくだろう。
広瀬 直人 (編者・主要執筆)
中田 剛
矢島 渚男
今井 聖
中嶋 秀子
それぞれの俳人が培ってきた実作の経験と思想が惜しみなく注ぎ込まれており、どの章を読んでも大きな発見がある。
俳句の根幹である「季語・切字・定型」の力を根本から見つめ直し、自らの作句力をより強靭なものへと鍛え上げたいと願う書き手にとって、これ以上なく心強いバイブルとなる一冊。
♦ 添削本
俳人が投稿された俳句を直す(添削)する様子を載せた本
俳句を修正する過程が勉強になる
夏井いつきの超カンタン!俳句塾
夏井いつきの超カンタン!俳句塾 才能アリ!俳句の作り方。
著者名 夏井 いつき
出版者 世界文化社
出版年月 2016.7
★★★★☆
本書の企画の中で、「仕事」を題材にした公募句から40句を厳選し、具体的な添削を行っている。
季語や助詞をほんの一箇所変えるだけで、作品の印象が劇的に変わる様子が手取るように分かる。
今回は40句すべてが「仕事」という同一テーマのため、「仕事の俳句を詠むときは、どんな失敗をしやすいのか」「どういう視点に偏りがちか」という傾向を比較・確認できるのが大きな特徴。
俳句の作り方110のコツ
俳句の作り方110のコツ 添削だからよくわかる
著者名 辻 桃子
出版者 主婦の友インフォス情報社
出版年月 2005.3
★★★★☆
本書では、110作品もの俳句を対象に「断定、具体化、写生、説明の避け方、比喩」といった、多角的なアプローチによる添削プロセスが網羅されている。
作品全体をガラリと変えるのではなく、ポイントを絞って部分的に添削しているため、一箇所の変更で作品がどう生まれ変わるのかが非常に理解しやすい構成。
本書を120%活かす勉強法は、元の句を見てまず「自分ならこう直す」と考えてから、答え合わせのように添削を読むこと。
もし「初心者だから、具体的な直し方なんて思い浮かばない」という場合は、「もし自分がこの句を1箇所だけ変えるとしたら、どこを直すか?」という視点で考えてみること。これなら初心者でも挑戦できるはず。
この「直すべき1箇所(問題点)を見極める能力」こそが、将来自分が句作や推敲をする際、作品のクオリティを劇的に高める確かな力(実力)へと繋がっていく。
基礎からわかるはじめての俳句上達のポイント
基礎からわかるはじめての俳句上達のポイント コツがわかる本
著者名 上野 貴子
出版者 メイツユニバーサルコンテンツ
出版年月 2020.6
★★★☆☆
本書は、約60句の俳句を例に挙げながら、実践的な推敲の手順を紹介している。
それぞれの句が抱える「問題点」や「修正すべき箇所・その内容」が明確に示されているのが特徴。
特に、原句と添削後の俳句がすぐ隣に並べて掲載されているため、一箇所の変更によるビフォーアフターの効果を視覚的に比較しやすくなっている。
コメント欄には「なぜこのように修正したのか」という具体的な理由もしっかりと解説されており、自分が俳句を作る際に「どこに注意すべきか」を体系的に学ぶための、非常に優れた参考書。
俳句のいのち
俳句のいのち
著者名 森 澄雄
出版者 角川書店
出版年月 1998.2
★★★★☆
本書には、句会に提出された作品に対して、俳人・森澄雄氏が行ったリアルな講評が収録されている。
ガラリと添削している作品だけでなく、あえて手は加えず「注意点」を述べるに留めている作品もある。
しかし、この注意点の指摘こそが、とんでもなく具体的なのが本書の凄み。
助詞一つ、動詞の活用の選択肢一つにいたるまで、わずか「一音」の違いに対して『私はこう思う、なぜなら……』と徹底的に因果関係を掘り下げており、『プロはここまで言葉を凝視するのか』と驚きを禁じ得なかった。
しかもこれらは、事前に時間をかけて推敲した文章ではなく、その場の限られた時間で披講・鑑賞する「句会」での発言。
『短時間の中で、なぜここまで深く、構造を見抜いて読み込めるのか』という、達人の凄みと臨場感にも圧倒される。
自分が句作をする際、一音の妥協も許さない「プロの視座と注意点」を脳内にインストールするために、ぜひとも読んでおきたい一冊。
俳句添削教室 上
俳句添削教室 上
著者名 山口 誓子
出版者 埼玉福祉会
出版年月 1989.10
★★★★☆
本書は添削本でありながら、冒頭の第1章を丸ごと費やして、松尾芭蕉や正岡子規の「俳句に対する思想」を丁寧に紐解いている。
芭蕉の俳論(俳句の理論)は多くの研究書で解説されていますが、元々の言葉遣いが独特なため、解説書自体が難解になっているケースも少なくない。しかし、本書の解説は驚くほど明快で、すんなりと胸に落ちてくる。
俳句添削教室 下
俳句添削教室 下
著者名 山口 誓子
出版者 埼玉福祉会
出版年月 1989.10
★★★☆☆
本書の特徴は、俳句で「一番伝えたいこと」を正確かつ魅力的に表現するために、極めて具体的な添削がなされている点にある。
「ここは言葉を尽くして丁寧に描写すべき」「こうした別の表現もある」「変に凝るよりも、素直に詠んだほうがいい」といったアドバイスが並ぶ。
例えば、「薄化粧をした富士」という比喩を用いた句に対し、「見たままに『雪を被る富士』としたほうがいい」と諭す場面がある。
私自身も似たような作句をしてしまった経験があり、下手な比喩はかえって作品を安っぽく(俗っぽく)してしまうのだと、深く考えさせられた。
添削本を読む際は、まず「自分ならどこが気になるか」「どう直すか」を考えてから著者の添削例や解説を見る。これこそが、最も血肉になる学び方だと実感する。
また、あとがきに記された「短詩は、少ない言葉を『てにをは』によって活かす。短歌は『てにをは』の詩と言われるが、俳句はそれ以上に『てにをは』の詩である」という言葉が深く印象に残った。
助詞一つで視点や印象がガラリと変わり、それに伴って語順や選ぶ言葉も変わっていく。一音たりともおろそかにしてはならないと、改めて身が引き締まる思いだ。
さらに本書では、「詠まれている自然の物と物とが『照応(響き合い)』していることこそが、俳句を俳句たらしめている」と説いている。
物と物の間に関連性がなく、ただ並べられているだけの俳句は「そもそも添削すらしない」という厳しい一喝もあり、作句に対する本質的な心構えを教えられた気がする。
このあとがきに込められた思想を何度も振り返りながら、改めて各添削を読み解くことで、山口誓子氏の思考をより深く追体験し、自分のものとして吸収できるのではないか。
狩行俳句入門
狩行俳句入門
著者名 鷹羽 狩行
出版者 ふらんす堂
出版年月 1997.12
★★☆☆☆
鷹羽狩行氏は季語を極めて重要視しており、その添削でも「こちらの季語に変えたほうが、より情景や心情に広がりが出る」といった、季語の変更を伴う提案が多いのが特徴。
どのような季語を選ぶかは、俳句の本質に関わる。
だからこそ、本書は「季語の取り合わせが難しい」と感じている方にまさにうってつけの一冊。
また、具体的な添削例だけでなく、「上手い俳句とは何か」「写生とはどういうことか」「どうすれば上達するのか」といった、初心者が抱きがちな疑問に正面から答えるコーナーも設けられており、非常に学びの多い構成になっている。
添削でつかむ!俳句の極意
添削でつかむ!俳句の極意 NHK俳句 7つのメソッドで力がつく
著者名 高柳 克弘
出版者 NHK出版
出版年月 2023.10
★★★☆☆
理想の俳句に近づくためには、数多くの添削例に触れ、「推敲する力」を養うことが不可欠であると本書は説いている。
紙面では、久保田万太郎、飯田蛇笏、石田波郷、高浜虚子、松尾芭蕉、中村草田男といった、時代を築いた偉大な俳人たちが当時実際に行った添削例が紹介されている。
これら多様な巨匠たちの視点に触れることで、俳句に対する広く重層的なアプローチを学べるのが、本書の大きな特徴。
さらに、それぞれの俳人が残した「俳句とは何か」という本質的な作句理念(俳論)にも光が当てられており、非常に深い学びが得られる。
また、こうした歴史的な名句の検証だけでなく、高柳克弘氏による一般読者からの投句添削も掲載されており、現代の作句にも直結する実践的な参考書となっている。
俳句劇的添削術
俳句劇的添削術
著者名 井上 弘美
出版者 KADOKAWA
出版年月 2022.8
★★★☆☆
本書の最大の特徴は、作者と井上弘美氏との往復書簡を通じて、作品が仕上がっていくプロセスを追体験できる点にある。
まず、作者による原句とともに、それが詠まれた背景が詳しく綴られる。
これによって、一般的な添削本では見えにくい「原句が生まれた瞬間の状況」を深く理解することができる。
例えば、伝統行事の「野馬追(のまおい)」を詠んだ作品では、その歴史や行事の内容、その時作者が何を感じたのかまでが丁寧に描写されている。その上で、作者自身が推敲を重ねた「成句」も掲載されているため、作り手側の思考過程をリアルに辿ることができる。
そして井上氏の添削は、そうした背景をすべて汲み取った上で行われる。
「この題材を詠むのであれば、その情緒をより引き出すために、このような表現にしてみてはどうか」と、作者に寄り添いながら導いてくれる。
指導を受ける作者の真摯な姿勢と、井上氏の丁寧で温厚な眼差し。
その双方の熱量が伝わってくる、非常に好感の持てる一冊。
季語を生かす俳句の作り方
季語を生かす俳句の作り方
著者名 鷹羽 狩行
出版者 日本経済新聞社
出版年月 1998.2
★★★☆☆
掲載されている添削俳句は300句近くに及ぶ。その一つひとつに丁寧な解説を付して添削を行っているパワーには、ただただ圧倒される。
解説文も「なんとなく感覚でこちらのほうが良い」という抽象的なものではない。
「ここがこうだから機能していない」「この表現に変えれば、こういう理由で句が良くなる」と、すべてが論理的に説明されているため、非常に説得力があり勉強になる。
夏井いつきの俳句添削事典
夏井いつきの俳句添削事典
著者名 夏井 いつき
出版者 朝日出版社
出版年月 2026.1
★★★☆☆
数百の投句に対して夏井いつき氏が添削を行う本書。
季語や五七五の構造、文法の確認など、テーマごとに章立てされていますが、特に「類想を避けるために、誰もが使いがちな言葉は避けること」という指摘が非常に参考になりました。
例として挙げられていた「見る」「映る」「流れる」といった言葉は、自分でもつい使ってしまっていると気づかされます。俳句の内容によっては必要な場合もありますが、実際には安易に使われているケースが少なくありません。
実際にそれらの言葉が使われた投句を見てみると、確かに「なくても成立する(必要のない)言葉」だと実感しました。
また、ほかにも「この俳句のこの言葉はいらない」と次々に添削していくコーナーもあります。解説を読む前に自分ならどこを削るかを考え、答え合わせをするように読み進めるのも、非常に良い勉強になります。
超辛口先生の赤ペン俳句教室
超辛口先生の赤ペン俳句教室
夏井 いつき
2014年出版
朝日出版社
★★★☆☆
本書は、テレビ等で辛口ながらも愛のある指導でおなじみの夏井いつき先生が、実際の俳句を例題に用いて読者に数々の「問い」を投げかける、体験型の俳句ドリル。
出題される問題の切り口は多岐にわたり、かつ実践的。
「この俳句において、主たる季語以外の『別の季語』を探してください」
「この一句には季語が何個含まれているでしょうか」
「この季語は本来、何を意味しますか?」
など、読者が自ら頭を悩ませる仕掛けが随所に施されている。
これらの問題が優れているのは、決して単なる知識欲を満たすためだけのものではない点。
出題の多くは、初心者が無意識のうちに陥りがちな「俳句の失敗パターン」をあぶり出すように設計されている。
クイズを解き、その解説(回答)を確認していくプロセスの中で、読者は「なるほど、自分もこういう作り方をしてしまっていた」「ここに気を付けなければいけないのだ」と、自らの盲点に自然と気が付くことができる。
さらに本書の価値は、問題として扱われたすべての句に対し、その後に夏井先生による鮮やかな「添削」が施されている点。
不備の本質を突いた上で、「ここをこのように直せば、句が劇的に生まれ変わる」というビフォー・アフターが示されるため、理解の深まりが圧倒的に違う。
ただルールを暗記する座学ではなく、間違えることで実力を養う。
自作の句に潜む「見えない弱点」を克服し、一段上の作句力を身につけたい初心者にとって、これ以上ない格好の教科書。
♦ 推敲本
自分の作品を直す(推敲)ときに、どこを見ればいいか、などが勉強できる本
俳句講座季語と定型を極める
俳句講座季語と定型を極める
著者名 岸本 尚毅
出版者 草思社
出版年月 2024.2
★★★☆☆
本書は、季語の取り合わせや助詞の工夫、字余りを効果的に使う方法など、まさに俳句を実際に作る人(実作者)に向けて書かれた一冊です。
とはいえ、「実作者向け」と構える必要はありません。
一句でも作ったことがあれば、その人はもう立派な実作者です。
初心者にも分かりやすい言葉で丁寧に解説されているので、臆せず読めば必ず大きな学びが得られます。
実を言うと、私はこの本を読むまで、カタカナを多用した俳句に少し抵抗感がありました。
古語を基調とする俳句において、カタカナは視覚的にも、音の響きの面でも、どこか馴染まないような気がしていたのです。
しかし著者の岸本尚毅氏は、カタカナならではの利点や役割を挙げ、独自の見解を提示してくれています。
それを読んだとき、「なるほど、確かにこういうケースであれば、カタカナを使うのも効果的なのだな」と、すとんと腑に落ちるものがありました。
自分一人で考えていると、どうしても視野が狭くなってしまいがちです。
しかし、こうして本を通じて先達(せんだつ)の意見に触れることで、自分の創作の幅を広げる貴重な気づきを得ることができました。
俳句のギモンに答えます 角川俳句ライブラリー
俳句のギモンに答えます 角川俳句ライブラリー
著者名 岸本 尚毅
出版者 角川学芸出版
出版年月 2012.4
★★☆☆☆
季語の付きすぎや季重なり、写生、説明句、擬人法など、俳句を嗜む人なら誰もが一度は悩むポイントについて、本書は丁寧に解説し、「こう考えるといい」という明確なアドバイスをくれます。
驚くべきは、このような細かな疑問が100近くも網羅され、その一つひとつに必ず例句が掲載されている点です。
解説文を書くだけでも大変なところ、的確な例句を探し出し、さらにそれを踏まえた解説まで加えるのは、気の遠くなるような作業だったに違いありません。
俳句の作り手が日常で直面する様々な疑問や悩みが、この一冊に凝縮されています。
自分の考えを再確認できる部分はもちろん、「なるほど」と新しい視点や価値観を得られる部分もきっとあるはずです。
ぜひ一度、手に取ってみてはいかがでしょうか。
あるある!お悩み相談室「名句の学び方」 NHK俳句
あるある!お悩み相談室「名句の学び方」 NHK俳句
著者名 岸本 葉子
出版者 NHK出版
出版年月 2021.1
★★★☆☆
俳句を作るとき、誰もが一度は悩むポイントについて、岸本尚毅氏が的確なアドバイスをしています。
例えば、次のような悩みです。
「季重なりはどうすればいいの?」
「散文になってしまう」
「ありきたりの発想になってしまう」
これらに対するアドバイスが実に見事で、非常に勉強になりました。
私は俳句歴が8年になります。そのため、当初は『あるある!お悩み相談室「名句の学び方」』というタイトルを見て、「初心者向けの内容だろう」「これまでに読んできた入門書と同じようなことが書かれているのだろう」と思っていました。
しかし、実際に読み進めてみると、一般的な入門書とは異なる視点からのアドバイスが驚くほど多く、思わず「なるほど」と唸らされることばかりでした。
岸本氏自身が日々の句作のなかで実感されたことをもとにアドバイスされているからこそ、より一層、実作者には「そうか」と心に響くものがあります。初心者向けの入門書によくある定型的なアドバイスとは、ひと味もふた味も違う深い一冊です。
夏井いつきの超カンタン!俳句塾
夏井いつきの超カンタン!俳句塾
夏井 いつき
2016年出版
世界文化社
★★★☆☆
多くの入門書がルールの説明に終始する中、本書は初心者にとって実践的な以下のポイントが丁寧に説明されている
説明し過ぎ(散文化)の俳句の直し方
季重なり(一つの句に複数の季語が入ってしまうこと)の際の直し方
その場にふさわしい季語の選び方
「て・に・を・は」など、助詞一つで表現がガラリと変わる様子
など
これらが具体的なビフォー・アフターで示されるため
鑑賞の勉強になるだけでなく、自分の句をどうブラッシュアップすればいいかが一目でわかる
俳句を始めたばかりの頃は、「あれもこれも伝えたい」という瑞々しい意欲が仇となり、詠みたいことを十七音の中に無理やり詰め込み過ぎてしまうという失敗が、誰にでも起こる
本書では、この俳句のキャパシティを「十七音の器の限界」という言葉で表現している
添削のプロセスでは、この限界について非常に的確なアドバイスがなされている
「全てを一つの句で言うことはできない。だからこの俳句はここまで。残りの要素は、もう一つの別の俳句として詠みましょう」
というように、削るべきものを明確にし、次の句へつなげる適切なアドバイスがなされている
「十七音の器の限界を知る」ということは、俳句を作るうえで極めて重要なステップになる
言いたいことを無理に詰め込み、何時間も、あるいは何日も頭を悩ませて推敲したとしても、器から溢れてしまった句は結局のところ失敗に終わる
最初から「十七音にはこれだけの量しか入らない」という器の大きさの感覚を体得しておくことで
「伝わらない句に無駄な時間をかけ続ける」という遠回りを減らすことができるはず
俳句のひねり方
俳句のひねり方
楠本 憲吉
2009年出版
ごま書房新社
★★★☆☆
本書は、俳句を作る際の心構えから、推敲(すいこう)による具体的な直し方までを網羅した、極めて実戦的な指導書。
著者は、俳句を詠むにあたっては「心が動いた決定的瞬間」を逃さずに捉えるべきだと説く。
さらに本書の真価は、誰もが突き当たる「目の付け所」について深く踏み込んでいる点にある。
何をどのように観察すればいいのか、どのような対象が句に仕立てやすいのか。
こうした問いに対して著者なりの明確な指標が提示されており、これは初心者のみならず、日々の実作で壁にぶつかっている中級者にとっても大きな指針となる。
また、本書が提示する「直し方(推敲)」の技法も非常に具体的である。わずか一文字を変えるだけで句が見違えるように良くなるプロセスが、鮮やかに解説されている。
特に腑に落ちるのは、「見たままをただ写生すればいいわけではない」という指摘。
自分の感動を読者へ効果的に伝えるためには、言葉による「仕掛け」が必要であると著者は言う。
その一例として挙げられているのが、高浜虚子の名句〈流れ行く大根の葉の早さかな〉。
本書では、この句における「流れ行く」という表現こそが、読者の目を引きつける「言葉の仕掛け」であると分かりやすく紐解いている。
単なる作法にとどまらず、一歩進んだ「読者に伝えるための表現技術」を学びたい書き手にとって、多くのインスピレーションを与えてくれる一冊。
♦ 俳句作品の本
様々な俳句が掲載された本
歳時記の例句ばかりを参考にしていたら、マンネリ化するので、たまには違う傾向の作品を読むことも大切
朝日俳壇
朝日俳壇
著者名 長谷川 櫂
出版者 朝日新聞出版
★★★☆☆
朝日新聞には週に1回、公募句を扱う俳句コーナー(朝日俳壇)が設けられています。
紙面には、厳選のうえ入選した俳句とともに、第一線で活躍する選者による鋭い鑑賞文が掲載されています。
特筆すべきは、4人の異なる選者によるバラエティ豊かな鑑賞文に毎週触れられる点です。
選者それぞれの「鑑賞の視点」や「言葉の紡ぎ方(文章の書き方)」を一堂に比較できるため、俳句の奥深さを学ぶための非常に優れた教材(参考書)になります。
新折々のうた
新折々のうた1
新折々のうた2
新折々のうた3
新折々のうた4
新折々のうた5
新折々のうた6
新折々のうた7
新折々のうた8
著者名 大岡 信
出版者 岩波書店
★★★★☆
本シリーズ(全1〜8巻)では、選び抜かれた俳句や短歌の美しい鑑賞文を堪能できます。
著者(大岡信氏)は、朝日新聞朝刊の1面にて、長年にわたり詩歌の鑑賞コラムを連載されていました。
私自身、中学生のときに初めてそのコラムに触れ、「世の中にこんなにも綺麗な文章があるのか」と激しい感銘を受けたことを今でも鮮明に覚えています。
取り上げられている俳句や短歌そのものが素晴らしいのはもちろん、それらに寄り添う鑑賞文もまた、自然と透き通るような美しさをまとっています。
秀句・秀歌の味わい方はもちろん、日本語として極めて美しい「文章の書き方」のお手本としても、時代を超えて深く参考になる名著です。
♦ 鑑賞本
俳人が俳句を鑑賞する本
俳人がどういう視点で俳句を鑑賞しているのか分かる
その視点は、自身の俳句作りの参考にもなる
夏井いつきの世界一わかりやすい俳句鑑賞の授業
夏井いつきの世界一わかりやすい俳句鑑賞の授業
著者名 夏井 いつき
出版者 PHP研究所
出版年月 2022.1
★★★★☆
本書では、一つの作品をパーツ(助詞の使い方、全体の構造、切れ字など)にまで細かく分解し、丁寧に読み解いていく「鑑賞の手順」が紹介されています。
多くの俳句を並べて一つずつに鑑賞文を添えている一般的な本とは異なり、本書は一作品の助詞の使い方にまで深く踏み込んでいるのが特徴です。
これにより、俳句の選者が応募作品のどこに着目し、どう思考を巡らせて選んでいるのか、その舞台裏をリアルに疑似体験できます。
他者の作品を鑑賞する際の眼を養えるのはもちろん、自分自身の俳句作り(推敲や言葉選び)の確かな指針としても大いに参考になるはずです。
俳句必携1000句を楽しむ
俳句必携1000句を楽しむ
著者名 宮坂 静生
出版者 平凡社
出版年月 2019.5
★★★★☆
本書には1000句という圧倒的な数の俳句が掲載されており、非常に読みごたえがあります。
1作品あたり約250文字の鑑賞文は、作品が描く情景(景)に6割、作者の背景に2割、技法に2割というバランスで構成されているのが特徴です。
解説では、句に使われている言葉のさまざまな「蘊蓄(うんちく)」についても丁寧に触れられています。
そのため、一読しただけでは気付けなかった景色の広がりが、鑑賞文を読むことで一気に目の前へ浮かび上がってきます。
「あらかじめ多様な知識を持っていれば、作品に出会ったその瞬間に、ここまで深い解釈ができるのだ」という新鮮な感動を味わえる一冊です。
現代俳句ノート 名句を味わう
現代俳句ノート 名句を味わう
著者名 高柳 克弘
出版者 ふらんす堂
出版年月 2024.6
★★★★☆
本書では、水原秋櫻子、飯田蛇笏、中村草田男、飯田龍太、中村汀女、西東三鬼、石田波郷、秋元不死男、芝不器男、さらには夏目漱石にいたるまで、時代を彩る26名の名俳人たちの作品をじっくりと鑑賞しています。
最大の特徴は、言葉選びや着眼点といった「作品の技法の巧みさ」に多くの文字数を割いて解説している点です。 1作品あたりの鑑賞文は約300文字。
その構成は、作品が描く情景(景)に2割、作者の背景に1割、そして残りの7割を「技法」の分析に費やしています。
どのような視点、技法、構造によって優れた俳句が生まれるのか――。
その具体的なプロセスが深く理解できる、創作の参考書としても最適な一冊です。
夏井いつきの超カンタン!俳句塾 才能アリ!俳句の作り方。
夏井いつきの超カンタン!俳句塾 才能アリ!俳句の作り方。
著者名 夏井 いつき
出版者 世界文化社
出版年月 2016.7
★★☆☆☆
本の中の企画として、優れた俳句25句を厳選し、それぞれに選評(鑑賞文)を執筆しています。
本来「選評」とは、数ある投句の中から選んだ作品を批評することですが、広い意味では「作品の鑑賞」と変わりません。そのため、ここではどなたでも楽しめる鑑賞文としてご紹介しています。
この本の解説の特徴は、季語や言葉そのものから広がる「映像の大きさ(スケール感)」に着目している点です。これらの鑑賞文を読むことで、季語の使い方や言葉選びのコツを学ぶことができるはずです。
古典名句鑑賞歳時記
古典名句鑑賞歳時記
著者 山本 健吉
2010年出版
角川学芸ブックス
★★★☆☆
本書は、著名な文芸評論家・山本健吉が選んだ古典名句472編を収録した鑑賞文集。
構成は一般的な歳時記の目次に準じている。
「春夏秋冬+新年」の大分類から始まり、「時効、天文、地理」の中分類、さらに「春、立春、春めく」といった個別の季語へと至る小分類となっている。
そのため、自分が調べたい季語のページへと簡単にアクセスし、その季語を用いた代表的な俳句と鑑賞文をすぐに読むことができる。
各句の鑑賞文は3〜4行程度にコンパクトにまとめられているものが大半だが、重要な句には丸1ページを費やして解説されている。
内容の特徴は、極めて「直訳」に近く、実直な句の背景説明に重きが置かれている。
そのため、俳句作品をパッと見ても「どういう情景を詠んでいるのか分からない」「意味が掴めない」という初心者にとっては、情景を具体的にイメージするための非常に役に立つ本になるはず。
一方で、技術的な深掘りを求める読者には注意が必要だ。
「この表現がなぜ優れているのか」「この助詞がどのような効果をもたらしているのか」といった、表現技法や推敲のメカニズムに迫る鑑賞文を期待する人にとっては、やや物足りなく、肩透かしを食らうかもしれない。
本書は、技法まで踏み込んだ鑑賞本ではなく、あくまで「意味と情景」を正しく掴むための鑑賞本となる。
作句力をアップ名句徹底鑑賞ドリル
作句力をアップ名句徹底鑑賞ドリル
高柳 克弘
2017年出版
NHK出版
★★★☆☆
本書は、名句と称される俳句を徹底的に解剖し、その凄さの構造を明らかにしていく実践的なドリル。
著者の高柳克弘氏による俳句鑑賞文は、以前からその読み込みの深さに驚かされてきたが、本書を読んで改めてその理由に納得がいった。
たとえば、飯田龍太の名句
「一月の川一月の谷の中」
を例に挙げる場面。
本書ではこの一句に対して、「一月の」という同語反復の効果、名詞と助詞だけで構成されているという特異性、そして形式そのものがもたらす骨格の堅牢さなど、微細な要素に至るまで細かく解剖し、一つ一つ丁寧に解説を加えている。
ここまで緻密に分析されて初めて、名句が名句たる所以(ゆえん)が立体的に見えてくる。
俳句の世界ではよく、「良い鑑賞ができてこそ、良い俳句が作れるようになる」と言われる。言葉の奥にある情景や構造を正しく読み解く力は、そのまま自分が作句する際の表現力へと直結するから。
本書は、単に「素晴らしい句だ」と感嘆するだけの鑑賞から脱却し、名句と言われる理由を、自らの作句力へと昇華させるための道標である。
良い鑑賞ができるようになりたいと願う者にとって、必読の一冊。
鑑賞季語の時空
鑑賞季語の時空
高野 ムツオ
2020年出版
角川文化振興財団
★★☆☆☆
本書は、現代の俳壇を代表する俳人の一人・高野ムツオ氏が、俳句や短歌作品の魅力に迫る鑑賞文集。
本書の構成は極めてユニークで、実戦的。
たとえば「燕(つばめ)」という一つの題材を取り上げる際、それに関する名作を連続して10句前後並べ、その一作一作に対して丁寧に鑑賞文を付している。
「蛍」「秋風」「コオロギ」といった他の題材においても同様のアプローチがされている。
同一の題材を集中して並べるという仕掛けが、読者に素晴らしい視座をもたらす。
同じ「燕」や「蛍」を前にしても、先達たちはそれをどう見つめ、どのような状況下で言葉に定着させたのか。表現のバリエーションや着眼点の妙を、読者は自然と横並びで「比較」しながら読み進めることができる。
ただ一瞬の感動を綴るだけでなく、同じモチーフが描き手によってこれほどまでに多彩な時空へと変貌を遂げるのかという驚きは、自らが作品を作る際の大いなる学びとなるはず。
一つの季語を深く掘り下げ、表現の地平を広げたいと願う書き手にとって、鑑賞の愉悦とともに、創作の引き出しを劇的に増やしてくれる一冊。
♦ その他俳句本
俳句関連の本
俳句作りの本だけを読むのではなく、別の視点の読み物を読むことも勉強になる
俳句のはじまる場所
俳句のはじまる場所 実力俳人への道
著者名 小澤 實
出版者 角川学芸出版
出版年月 2007.7
★★☆☆☆
切れ字や定型、取り合わせなど、俳句の技法・規則の歴史をまとめた一冊。
その背景にある歴史を紐解くことで、現代の俳句のルールに対して自分なりの批評眼や考えを持てるようになります。
俳句とは何か
俳句とは何か
著者名 山本 健吉
出版者 角川書店
出版年月 2000.7
★★☆☆☆
タイトルが哲学的な問いだったため手に取ってみたが、「俳句とは何か」「俳句を含めた芸術とは何か」を深く掘り下げるような内容ではなかった。
どちらかといえば、俳句を題材にした軽妙なエッセイに近い。
「俳句の本質とは何か?」「何のために俳句を詠むのか?」といった問いへのヒントを期待して読むと、少し肩透かしを食らうかもしれない。
名句に学ぶ俳句の骨法 上
名句に学ぶ俳句の骨法 上
斎藤 夏風
2001年出版
角川書店
★★★☆☆
本書は、実戦の第一線で活躍する著名な俳人たちが、「定型と破調」「発想」「写生」「抒情」といった俳句の本質的なテーマについて語り合う対談集。
一般的な入門書や解説書は、分かりやすさや万人受けを意識するあまり、どの本を読んでも似たような内容に終始しがち。
しかし本書は、名前の知れた表現者同士が、互いの思想をぶつけ合っている。
「浅い発言はできない」という張り詰めた緊張感が底流にあり、だからこそ、時折ハッとするような深く鋭い本質が語られる。
その対話の応酬が極めて刺激的であり、面白い。
それを証明するように、登場する対談陣の顔ぶれを見るだけでもその豪華さに圧倒される。
斎藤 夏風
鍵和田 秞子
大串 章
清水 哲男
復本 一郎
石田 勝彦
佐佐木 幸綱
矢島 渚男
辻田 克巳
山下 一海
落合 水尾
第一線で俳句と向き合い続ける実力者たちが、それぞれの技法や思想をぶつけ合うからこそ、本書には教科書的な解説を超えた「俳句の本質」が息づいている。
一般論に物足りなさを感じる読者にとって、一歩深い領域へと導いてくれる一冊。
名句に学ぶ俳句の骨法 下
名句に学ぶ俳句の骨法 下
斎藤 夏風
2001年出版
角川書店
★★★☆☆
上巻に引き続き、本書(下巻)もまた、現代の俳壇を牽引する著名な俳人たちが「切れ字」「比喩」「季語」「省略」「句会」といった、より実践的かつ核心的なテーマについて縦横に語り合う対談集。
通常、俳句の指導書といえば、著者が読者に向けて一方通行で教える形式がほとんどである。しかし本書のように、指導者である「先生同士」が俳句の本質的な問題について対等に議論を交わす試みは、極めて稀有。
対話だからこそ、時に予期せぬ鋭い質問が飛び、それに答える形でさらに深い発言が引き出される。そのダイナミズムは非常に新鮮。
日頃、私たちが参加する句会で交わされる合評も確かに学びが多い。
しかし、結社や俳句界を文字通り引っ張っている第一人者同士の会話となれば、その次元は全く異なる。彼らの思考の軌跡に触れることは、何よりの勉強になる。
下巻においても、その対談メンバーの顔ぶれは贅沢を極めている。
斎藤 夏風
鍵和田 秞子
大串 章
高橋 悦男
茨木 和生
棚山 波朗
宇多 喜代子
平井 照敏
「切れ」や「省略」といった、初心者から中上級者までが常に突き当たる壁に対して、実力者たちがどのように対峙し、言葉を選び取っているのか。
一方通行の講義からは決して得られない、生きた俳句思想がここに凝縮されている。
上巻と合わせて読み返したい名著。
日曜俳句入門
日曜俳句入門
吉竹 純
2019年出版
岩波書店
★★☆☆☆
「日曜俳句」。
一見、週末の趣味としての俳句を指すようだが、これは著者による独自の造語。
全国紙などの新聞俳壇に投句する一連の活動や文化に対し、これまで定まった名称がなかったことから、親しみを込めてこう命名したもの。
掲載される曜日は新聞によって異なるものの、それらを総称して「日曜俳句」と位置づけている。
私自身、日頃から全国紙の俳壇コーナーに参加している一人であり、まさに本書が定義する「日曜俳句」の実践者である。それゆえに、ページをめくりながら同じ道を歩む仲間に出会ったかのような、温かい親近感を覚えざるを得なかった。
本書では、この日曜俳句の世界を多角的に解き明かしている。
「一体どれほどの人口がこの世界にいるのか」という実態から、新聞投句ならではの独特の魅力、そして「見事に入選した作品を周囲に発表することで、人と人との輪が広がっていく」という歓び、さらには創作活動を細く長く続けていくための継続のコツにまで及んでいる。
新聞の俳壇への投句と聞くと、どこか敷居が高く、ベテランだけの世界のように感じる人もいるかもしれない。しかし、決してそんなことはない。
本書は、その心理的なハードルを優しく取り払い、誰もが日常の中で言葉を紡ぎ、発信していく楽しさを教えてくれる。
ぜひ本書を紐解いて俳句の魅力に触れ、一人でも多くの人が「日曜俳句」の世界へ、一歩を踏み出してほしいと感じる。
♦ 修辞法
レトリック辞典
レトリック辞典
著者名 野内 良三
出版者 国書刊行会
出版年月 1998.6
★★☆☆☆
俳句表現を高めるために読んだ
40-50種類近くの修辞法が掲載されていて、「Aの修辞法は、Bの修辞法と似ているが、若干違う」というように一般の人には分からないくらい、分類を細かくしている本だった
それぞれの修辞法の例文は、小説や慣用句などが中心で、長い言い回しなどが多い。それを俳句に置き換えるのは、少し難しいかもしれない
同じ著者の「日本語修辞辞典」と内容はほとんど変わらないが、本書の方が解説が多く、「日本語修辞辞典」の方が、例文が多いイメージがある
日本語修辞辞典
日本語修辞辞典
著者名 野内 良三
出版者 国書刊行会
出版年月 2005.8
★★☆☆☆
俳句表現を高めるために読んだ
40-50種類近くの修辞法が掲載されていて、Aの修辞法は、Bの修辞法と似ているが、若干違う、というように、細かく分類されている本
同じ著者の「レトリック辞典」と内容はほとんど変わらないが、「日本語修辞辞典」の方が、例文が多く、それぞれの方法のイメージが掴みやすいかもしれない
○○法の解説を多く読みたいなら「レトリック辞典」、例文を多く読みたいなら「日本語修辞辞典」だろうか・・・
修辞学・文学講義
修辞学・文学講義
著者名 アダム・スミス
出版者 未来社
出版年月 1972
★★☆☆☆
俳句表現のテクニックを高められないかと思い読んだ
この本は修辞のテクニックというより、修辞の歴史についての本
修辞を使うことで、俳句表現を高められると思って読んでいたが、本の中のこの忠告に、目の覚める思いだった
修辞を使えば文章に美が与えられる訳ではない
普通の文体より修辞の方が的確に表現できる場合に、適切な手段になるというだけ
だから、話し手の感情が明瞭に、巧みに表現されていれば、その文章は力と美を有する。修辞が文中に導入されているか否かは全く問題ではない
修辞的残像
修辞的残像
著者名 外山 滋比古
出版者 みすず書房
出版年月 1968
★★★★☆
俳句の表現を高めるための「修辞」を学びたくて本書を手に取ったが、第一章から思いがけず「俳句の余韻(切れ字の後の空白)」に関する深い考察に出会った。
本書では、言葉と言葉を結ぶ目に見えない原理を「修辞的残像」と呼び、それが生み出す何も無いのに表現性のある空間を「叙情空間」と名付けている。
短詩が独自の世界を表現できるのは、この空間が感情と深く結びついているからだと気づかされた。
音の響きに関して書かれた部分で、特に印象が残ったポイントがあった
音読の重要性
黙読で曖昧だった文章も、音読することで輪郭がはっきりする。詩はその典型である。
文末語の力
文章において最も決定的な印象を与えるのは文末語であり、常に注目すべきである。
芭蕉は音の響きが重要で、文字ではなく「音の響き」と「息遣い」が整うまで、舌の上で何度も転がして吟じなさいと言った。
本書は、この音の響きについての新しい価値観を与えてくれる本。

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