俳句の世界では、良い俳句は韻律が良いと言われます
しかし、具体的に韻律が何なのかを説明しているのは、聞いたことはありません
しかし、具体的に韻律が何なのかを説明しているのは、聞いたことはありません
ここでは、韻律とは何なのか
どのようにすれば、良い韻律の句が作れるのかを、具体的に説明します
「韻律」とは、音声の高さ・強さ・長さによって作り出される言葉のリズムを言います
ですから、音声の高さ・強さ・長さなどが整っていると、韻律の良い俳句と言うことになります
ここでは、音声の高さ・強さ・長さのうちの「音声の高さ」に絞って話を進めます
「音声の高さ」は高低のアクセントとも言えます
高低のアクセントは、俳句の韻律に大きく関連しているのです
音声の高さ(高低のアクセント)
日本語には高低のアクセントがあります
典型的な例は次の通りです
〇〇
〇
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〇
〇〇
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〇〇〇
〇
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〇
〇〇
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シブヤ
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エビス
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シロガネ
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タマチ
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音声のアクセントには約束があります
① 各単語の第一音と第二音は必ず高低が入れ替わる(これによって単語が変わったことが分かります)
② ひとつの単語中で、ひとたび高→低に降りたら、低→高へはもう上がらない
③ 単語が連結すると、一語としての高低のアクセントとなる(↓ニホン+テイエン)
〇
〇 〇
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〇
〇〇〇
|
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〇〇〇
〇 〇〇〇
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ニホン
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テイエン
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ニホンテイエン
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このような約束を踏まえたうえで俳句をみてみましょう
良い俳句は必ずと言っていいほど、高低のアクセントの流れが、スムーズであることが多いことに気付かされます
〇〇 〇 〇 〇〇〇
〇 〇〇 〇〇〇〇 〇 〇 〇
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ゆくはるを おうみのひとと をしみける
行春を 近江の人と をしみける
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上記の句の「おうみの」「ひとと」「をしみけり」のそれぞれの接続部分は、繋がりがスムーズです
「おうみの」が低音で終わると、次の単語の「ひとと」は低音で始まります
「ひとと」が低音で終わると、次の単語の「をしみけり」は低音で始まります
このようにして、高低のアクセントが流れるように続いています
唯一、前の単語の終わりと、次の単語の始まりにおいて、高低のアクセントが違う部分は下の黒丸(◉)の所です
〇〇 ◉ 〇 〇〇〇
〇 〇◉ 〇〇〇〇 〇 〇 〇
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ゆくはるを おうみのひとと をしみける
行春を 近江の人と をしみける
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ただ、ここは五・七・五の節目に位置するため、高低アクセントがずれることがむしろ、軽い切れのような印象を持たせることになっています
高低のアクセントは、正調の句と、破調の句を見比べてみると、違いがよく分かります
正調の句では、高低アクセントの流れがスムーズに進みますが
破調の句では、五・七・五の節目ではない部分で高低のアクセントが現れ、流れの悪さを感じさせます
正調の句と、破調の句を見比べてみましょう
(単語が変わったところで、高低アクセントがずれる部分を黒丸(◉)で表示します)
正調の句
〇〇 ◉ 〇 〇〇〇
〇 〇◉ 〇〇〇〇 〇 〇 〇
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ゆくはるを おうみのひとと をしみける
行春を 近江の人と をしみける
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〇 〇〇〇 〇〇〇
〇〇〇〇 〇 〇〇〇 〇 〇
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いくたびも ゆきのふかさを たずねけり
幾たびも 雪の深さを 尋ねけり
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〇〇 ◉ 〇 〇〇〇〇
〇 〇◉ 〇〇〇〇 〇 〇
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とどまれば あたりにふゆる とんぼかな
とどまれば あたりにふゆる 蜻蛉かな
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破調の句
〇〇〇◉ 〇 ◉ ◉
〇 ◉ 〇◉ 〇〇 〇◉ 〇〇〇
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あけぼのや しらうおしろき こといっすん
明ぼのや しら魚しろき こと一寸
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〇〇〇◉ 〇〇 〇〇 〇 ◉
〇 ◉ 〇〇 ◉ 〇〇
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だいがくの さびしさふゆき のみならず
大学の さびしさ冬木 のみならず
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〇 ◉ ◉ ◉ ◉
〇〇〇◉ 〇◉ ◉ 〇 〇◉ 〇〇
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うみくれて かものこえほの かにしろし
海暮れて 鴨の声ほの かに白し
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どうでしょうか?
全ての句がそうだとは言いませんが
正調の句は、波の流れのように、スムーズに高低が進みますが
正調の句は、波の流れのように、スムーズに高低が進みますが
破調の句の多くは、五・七・五の節目ではない部分で高低のアクセントが現れたりします
これが「破調の句は韻律が悪い」と言われる一つの理由とも言えるでしょう
また、高低のアクセントのズレが頻繁に現れると、やはり韻律が悪いように感じられます
上記のことから分かることは
隣り合う単語と高低を合わせることで、韻律の良い句に近づけられるということになります
そして、抑揚をつけるために、五・七・五の節目で高低をずらす、などの方法も効果的なのではないでしょうか
俳句を作るときに、毎回、高低のアクセントを意識することは現実的では無いので、あまり意識しすぎる必要は無いと思いますが、推敲の時には是非使ってもらいたいと思います
推敲をしていると、2つの単語のどちらを前にしようか悩むときがあります
そのような時に、どちらを前にすると、高低のアクセントがスムーズにいくのか?という視点を持って決めることも一つではないでしょうか
最後に
俳句作りに必要な韻律について、記事に書きました
今回は「 ①音声の強さ ②音声の高さ ③音声の長さ 」の中の「②音声の高さ」について、説明をしました。
「①音声の強さ ③音声の長さ」を読まれていない方は、そちらも一緒に読むと、より韻律を深く理解できて、良い俳句が作れるようになるはずです
① ─音声の強さについて─
② ─音声の高さについて─
③ ─音声の長さについて─