俳句を作るうえで、美しいリズムや響きは欠かせない要素です。リズムや響きが整うことで、作品の印象が大きく変わるからです。そのリズムや響きを美しく整えるための秘訣の一つが「音便」です。
たとえば、「書きて」を「書いて」、「読みて」を「読んで」とするのも、音便による変化です。音便を上手に使うことで、より滑らかで心地よいリズムや響きを生み出し、作品にさらなる魅力を与えることができます。
この記事では、初心者の方にもわかりやすく音便の使い方を解説しています。音便を使いこなすことで、あなたの作品の完成度が一段と高まるはずです。
音便の種類
音便(おんびん)は、日本語における音韻変化の一種で、特に動詞や形容詞の活用において、音が変化する現象です。音便には以下の4つの種類があります
① イ音便
② ウ音便
③ 撥音便(はつおんびん)
④ 促音便(そくおんびん)
では、それぞれについて、説明していきます
①イ音便
イ音便
「き」「ぎ」「し」「り」の子音 k, g, s, r が脱落して「イ」の音になる現象
「書きて→書いて」「泳ぎて→泳いで」「指して→指いて」「美しき→美しい」「おっしゃります→おっしゃいます」
「き」「ぎ」「し」「り」が全て「い」に変わっていますね
これがイ音便と呼ばれるものです
実際の俳句でみると、次のようになります
(下の句が、イ音便で変化した句です)
手紙を書きて旅に出る
↓↓↓↓↓
手紙を書いて旅に出る
②ウ音便
ウ音便
「く」「ぐ」「ひ」「び」「み」などが「ウ」の音になる現象
「よく→よう」「思ひて→思うて」「呼びて→呼うで」「頼みたる→頼うだる」
実際の俳句でみると、次のようになります
(下の句が、ウ音便で変化した句です)
父を思ひてビール飲む
↓↓↓↓↓
父を思うてビール飲む
ウ音便の注意点
ウ音便でよく見られる間違いがあります
先ほどの俳句は「思ひて」が「思うて」になりました
父を思ひてビール飲む
↓↓↓↓↓
父を思うてビール飲む
この「思ひて」を「思ふて」としてしまう人がいます
これは過ちです
父を思ひてビール飲む
↓↓↓↓↓
〇 父を思うてビール飲む
× 父を思ふてビール飲む
「ウ音便」は、「く」「ぐ」「ひ」「び」「み」などが「ウ」の音になる現象です
間違わないように注意しましょう
③撥音便(はつおんびん)
撥音便(はつおんびん)
連用形語尾の「に」「び」「み」が、「て」「たり」などに連なるとき撥音(ん)に変化するもの
「死にて→死んで」「飛びて→飛んで」「読みて→読んで」
実際の俳句でみると、次のようになります
(下の句が、撥音便で変化した句です)
ばらばらに飛びてゆく鴉
↓↓↓↓↓
ばらばらに飛んでゆく鴉
④促音便(そくおんびん)
促音便(そくおんびん)
連用形語尾の「ち」「ひ」「り」が、「て」「たり」などに連なるとき促音(っ)に変化するもの
「勝ちて→勝って」「言ひて→言って」「ありて→あって」
実際の俳句でみると、次のようになります
(下の句が、促音便で変化した句です)
雪と言ひて喜ぶ
↓↓↓↓↓
雪と言って喜ぶ
違う音便になることもある
一つの語が、二つの違う音便になることもあります
買ひて⇒買うて(ウ音便)
買ひて⇒買って(促音便)
このようなときは、俳句の前後の流れや音の響きを考えて、良いほうを選びます
最後に一言
一つの音が変化するだけですが、俳句の印象ががらりと良くなるときがあります
音便も意識して推敲をすると、より良い俳句に近づきますし、先輩から「おっ、勉強しているな」と思われるでしょう
俳句作りにお勧めの本
俳句作りで文法の基礎を勉強するのに、おすすめの本です
基礎をしっかりと学べるので、間違った言葉の使い方がなくなりますし
表現したい言葉を、古語に直して使えるようになります