ここでは、俳句を推敲時に、助詞の「を」と「が」を変更することで得られる効果を見ていきます。
俳句の推敲で、「を」と「が」の変更はしやすい
俳句を推敲する時に、助詞の「を」と「が」は変更しやすく、雰囲気も変わりやすいといえます。
ですので、推敲のひとつのテクニックとして、よく使われます。
例えば、下の文章は「を」と「が」で表現を変えたものです
餅を食う ←→ 餅が口の中
蝶を捕まえる ←→ 蝶が網の中
水をすくう ←→ 水が手の上
月を見上げる ←→ 月が真上に
それぞれ雰囲気が違うと思います。
「を」と「が」を変更することで、その後の言葉も変わっているということも理由にあるのですが
それぞれの文は同じ内容でも、雰囲気は大きく変わっているはずです。
では、なぜ「を」と「が」の変更で、文の雰囲気が変わるのか
それぞれの意味を確認して、見ていきましょう。
助詞「を」と「が」の意味
助詞「を」と「が」は、日本語の文で使われる言葉で、文の意味をはっきりさせたり、誰が何をするのかを示すのに使います。
「を」の使い方
何をするかを示す: 「を」は名詞の後について、動作の対象を教えてくれます。
例: 「リンゴを食べる」では、「食べる」が対象です。つまり、何をするかが「を」で示されています。
「が」の使い方
何が主語かを示す: 「が」は名詞の後について、何が主体なのかを教えてくれます。
例: 「犬が走る」では、「犬」が走る主体です。何が走るのかが「が」で示されています。
「を」と「が」の違い:「を」は後ろに、「が」は前に意識が向く
つまり、「を」と「が」の違いは
「を」は、「を」より後の言葉に意識が向くのに対して
「が」は、「が」より前の言葉に意識が向くと言えます。
「餅を落とす」であれば「落とす」に意識が向き、「餅が落ちる」では「餅」に意識が向きやすくなります。
推敲の際に、自分はどちらを言いたかったのか、と考えたときに、助詞の選択は正しいのかを考える指針になります。
「を」と「が」の違い:「が」の後は具体的になる
また、「を」と「が」の助詞を変えると、その後の言葉も変わります
餅を食う ←→ 餅が口の中
蝶を捕まえる ←→ 蝶が網の中
水をすくう ←→ 水が手の上
月を見上げる ←→ 月が真上に
同じ意味ではありますが、言葉が変わり、表現の雰囲気も変わります。
両者を比べると「が」の後につく言葉のほうが、より具体的な描写になっています。
俳句を推敲するときに、もう少し具体的な描写にしたい、というときは「を」を「が」に変更できないか、考えるのもひとつです
「を」と「が」の違い:「を」は他動詞、「が」は自動詞になる
「を」より「が」の方が、なぜ具体的な描写に感じるのでしょう。
これは、他動詞か自動詞かの違いもあると思います。
例えば、「を」でつなげた「扉を開ける」は、他動詞(他の人・物の行動)です。「誰かが扉を開ける」という内容であるため、そこにいる何者かの動作に視点が行きます。
一方で、「が」でつなげた「扉が開く」は、自動詞(主語みずからの行動)です。そうなると、主語(扉)あるいは、主語そのもの動きに視点が行くため、より具体的に扉の様子が目に浮かびます。
「を」と「が」のどちらを選ぶかを考えたとき、この違いも考慮に入れると、より適切な助詞を選ぶことができます。
「を」と「が」の、メリット・デメリット
「を」を使用した場合のメリットとデメリット
メリット | 「を」より後の言葉が強調される。 「餅を食う」など、行動の対象が明確になる。 |
デメリット | 「餅を食う」といえば、文の意味は明確であり、読者が想像する余地が少なくなる。 行動の対象が明確になるため、主体の存在や感情、状況などがおろそかになりやすい。例えば、「月を見上げる」では、見上げる行為が強調されるため、その背景や状況があいまいになる場合があります。 |
「が」を使用した場合のメリットとデメリット
メリット | 「が」より前の言葉が強調される 「餅が落ちる」など、主体が明確になる。 「扉が開く」など、主体と主体の行動が岳で構成されるため、より具体的な描写になる。 |
デメリット | 「扉が開く」といえば、なぜ開いたのか?という想像の余地が広がる。一方で、文のあいまいさ、にも繋がりかねない。 |
結論
助詞「を」と「が」の違いを説明しました。
俳句の手直しをするときは、伝えたいことの重要性や意図に合わせて、どちらの助詞を選ぶか考えると、よりよい俳句に直すことができるはずです。