夏の季語の謎!「厄身欠」はなぜ「厄」?

「厄身欠」とは

初夏の季語に、ニシンの頭と尾を落として干した「身欠鰊(みかきにしん)」があります。
この身欠鰊の関連季語に、「厄身欠(やくみがき)」という少し不思議な言葉が載っていることがあります。 1)

「厄」という言葉は、「厄払い」のように、災いを避ける意味で使われます。身欠鰊を干すことと、一体どのような関係があるのでしょうか?

「厄身欠」に隠された、北国の知恵

「厄身欠」とは、身欠鰊がカビないように、夏の土用のころに天日干しすることを指します。 2.3)

ニシン漁が盛んだった北海道では、大量に獲れたニシンを保存するために身欠鰊にしていました。しかし、湿気の多い梅雨や、夏の暑い時期にはカビが生えやすく、せっかく作った身欠鰊が台無しになってしまうことがあったのです。

「厄」という言葉は、災いを意味すると同時に、この時期に身欠鰊を干すという「手間をかけること」を表現しているのかもしれません。手間をかけることで、カビという「厄」から身欠鰊を守っていた、北国の暮らしの知恵が詰まった言葉かもしれません。

季語に隠された「地域の物語」

身欠鰊は、北海道の暮らしに深く根付いた風物詩です。かつて、北海道の俳人たちは、歳時記に載っていない地域の風物を、どうすれば季語にできるのか、試行錯誤していました。

「厄身欠」も、そうした先人たちの苦労から生まれた、北海道の季節を象徴する季語と言えるでしょう。

季語を学ぶことは、言葉の背後にある地域の文化や歴史、人々の暮らしを知ることでもあります。今まで知らなかった言葉に出会ったら、ぜひ一度、その言葉のルーツをたどってみてください。そこには、あなたの知らない「物語」が隠されているかもしれません。


参考資料

1)日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.
2)講談社 編集.(1982).日本大歳時記 : カラー図説 春.講談社.





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