冬の季語に「綱飛(つなとび)」という言葉があります。
多くの歳時記では、その意味を「縄跳びのこと」と説明していますが 1.2)
私たちが想像する縄跳びとは少し違うようです。
では、「綱飛」は、一体どのような遊びだったのでしょうか?
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季語に隠された、冬の遊び
「綱」は「縄」よりも太く、綱引きなどで使われる太い縄を指します。
昔の文献によると、「綱飛」とは、二人で太い綱を回し、その中を子どもたちが跳んで遊ぶ、大縄跳びのような遊びだったようです。3)
なぜ、この「綱飛」が冬の季語になったのでしょうか?
- 寒さを乗り切る遊び:体を大きく動かす綱飛は、寒い冬に子どもたちが体を温めるのにぴったりの遊びでした。
- 屋外での遊び:寒さが厳しく、戸外での遊びが限られる冬に、体を動かす貴重な機会でした。
現代の縄跳びは、一人で軽やかに跳ぶことが一般的ですが、昔の「綱飛」は、みんなで力を合わせて綱を回し、リズムを合わせて跳ぶ、共同作業としての側面が強かったのかもしれません。
季語の「言葉選び」を楽しむ
「綱飛」という季語は、単なる「縄跳び」とは異なる、どこか力強く、活気のある冬の情景を思い起こさせます。
もしあなたが冬の句を詠むとき、
- 「縄跳び」と詠めば、軽やかでリズミカルな情景。
- 「綱飛」と詠めば、力強く、みんなで寒さを乗り切るような情景。
といった、異なるニュアンスを伝えることができます。
季語を学ぶことは、言葉の奥深さを知る旅です。言葉の持つ意味だけでなく、その背後にある文化や歴史を知ることで、あなたの俳句はもっと楽しく、豊かなものになるでしょう。
参考資料
1)角川書店.(2022).新版角川俳句大歳時記.KADOKAWA.
2)日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.
3)大田才次郎 編, 瀬田貞二解説.日本児童遊戯集 (東洋文庫).(1968).平凡社.
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