晩夏の季語に、つる性の植物「葛藤(つづらふじ)」があります。
この「葛藤」の関連季語として、歳時記には「青葛(あをかづら)」や「葛籠葛(つづらかずら)」といった、よく似た言葉が載っていることがあります。
これらの言葉は、漢字の読み方も少しずつ違います。これは同じ植物?と疑問に思った人もいるのではないでしょうか。
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季語に隠された「植物の家系図」
これらの言葉の関係性を調べてみると、全て同じ、もしくは非常に近縁な植物を指していることが分かりました。
- 葛藤(つづらふじ):つる性の植物。
- 青葛(あをかづら):葛藤の別名。
- 葛籠葛(つづらかずら):青葛藤(あおつづらふじ)の別名。この青葛藤は、葛藤の仲間です。 1)
つまり、このように、全てが関連し合っているのです。
| 葛藤(つづらふじ) → → → 別名 → 青葛(あをかづら) ↓ 仲間 ↓ 青葛藤(あおつづらふじ)→ → 別名 → 葛籠葛(つづらかずら) |
歳時記によっては、途中の「青葛藤」が抜けていることがあり、言葉のつながりが分からず、混乱してしまうことがあります。
季語探偵を楽しもう
植物の名前は、地域や時代によって呼び名が変わり、多くの別称を持つことがあります。そのため、歳時記を読んでいると、「これとこれは同じ植物?」と疑問に思うことは珍しくありません。
もしあなたが、歳時記で言葉のつながりが分からなくなったときは、
- それぞれの言葉の意味を一つずつ調べる。
- その言葉の「別名」や「仲間」を調べてみる。
この作業を繰り返すと、バラバラに見えた言葉が、まるでパズルのように繋がり、その植物の全体像が見えてきます。
季語を学ぶことは、言葉の探偵になることです。少しでも「あれ?」と思う言葉に出会ったら、そのルーツをたどってみてください。その探求が、あなたの俳句をさらに豊かなものにしてくれるでしょう。
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参考資料
1)動植物名よみかた辞典 普及版.日外アソシエーツ. https://kotobank.jp/dictionary/animalsandplants/ (参照:2024.04.08)
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