俳句の『句切れ』とは

俳句の魅力を深く味わうために欠かせないのが「句切れ」です。
これは、俳句にリズムと区切りを与え、作者の伝えたいことを際立たせる大切な要素です。
この記事では、俳句の初心者の方に向けて、句切れの基本を分かりやすく解説します。


句切れの読み方

「句切れ」は「くぎれ」と読みます。
この言葉は、俳句の五・七・五の間に生まれる、意味やリズムの区切りを指します。


句切れとは

句切れとは、俳句の中で意味や内容、またはリズムが切れる部分のことです。これは、単なる区切りではなく、俳句に独特の抑揚や余韻を生み出すための重要な働きをします。

たとえば、倒置法を使った表現や、一つの俳句の中に複数の情景を描く場合、その変わり目に句切れがよく使われます。
また、「〜だなあ」「〜だことよ」といった詠嘆(えいたん)の気持ちを強く表現するときにも、句切れは欠かせません。


句切れの見つけ方

句切れを見つけるには、まず俳句を声に出して読んでみるのが一番のコツです。声に出すことで、どこで自然と一息つくのか、どこで意味がひとまとまりになっているのかが直感的に分かります。

句切れが生じる主な場所は、以下の3つです。

  1. 切れ字があるところ
    俳句には「」「かな」「けり」といった、句を強く言い切ったり、詠嘆を表したりする特定の言葉があります。これらを「切れ字」と呼び、切れ字がある場所には必ず句切れが生じます。
    • 夕焼け / ショパンの曲が 遠くから
      「夕焼けや」の「や」が「〜だなあ」という気持ちを表し、ここで意味が一旦区切られます。
  2. 読点(、)や句点(。)にあたるところ
    俳句は文語体で書かれることが多いですが、現代語に直してみると、文の区切りが見えてきます。文章でいう読点や句点が打てる場所が、句切れにあたることが多いです。
    • 日はのぼり / 桜の花が 散ってゆく /
      • この句は「日がのぼり、桜の花が散ってゆく。」という文と同じ構造です。そのため、「日はのぼり」の後に句切れがあります。
  3. 意味のまとまりがあるところ
    切れ字がなく、文章にしても読点や句点を打たない場合でも、意味のまとまりとして句切れが生じることがあります。
    • いわし雲 / 日本語という 摩天楼 /
      • この句は切れ字がありませんが、「いわし雲」「日本語という摩天楼」というように、意味のまとまりがはっきりと分かれています。


句切れの種類

句切れの位置によって、いくつかの種類に分けられます。

  • 初句切れ:五・七・五の最初の五音の後に句切れがあるもの。
    • 例:「古池や / 蛙飛び込む 水の音」
      • 「古池や」の「や」で句が切れている。
  • 二句切れ:五・七・五の真ん中の七音の後に句切れがあるもの。
    • 例:「雑踏に 捨てし愁い / 柳散る」
      • 「捨てし愁い」の「や」で句が切れている。
  • 三句切れ:五・七・五の最後の五音の後に句切れがあるもの。
    • 例:「赤い椿 白い椿と 落ちにけり
      • 「落ちにけり」の「けり」の「や」で句が切れている。
  • 句切れなし:五・七・五のどこにも句切れがないもの。
    • 例:「吹かれてる 柳を風と 思えたら」
      • 句全体が一つの文として流れ、どこにも句切れがない。
  • 中間切れ:初句、二句、三句などの途中に句切れがあるもの。の。
    • 例:「あらたまの 風 / 木の根を 抱く木の根」
      • 七音の途中の、「風や」の部分で句切れがある。


句切れなしの効果

句切れがない俳句は、五・七・五全体が流れるような一つの文を構成します。途中で区切りがないため、情景や感情がシームレスに伝わり、独特の軽やかさや統一感が生まれます。

通常の俳句は、句切れによって「間」が生まれ、余韻につながりますが、句切れがない句ではその「間」がありません。その代わりに、最後まですっと読み下せることで、軽やかな余韻や、一瞬の情景がそのまま心に残る効果があります。


句切れと切れ字の違い

句切れは、俳句の中で意味やリズムが区切れる「現象」そのものを指します。一方、切れ字は、その句切れを意図的に作り出すための特定の「言葉」です。

  • 「切れ字」がある場所には、必ず「句切れ」が生じます。
  • しかし、「句切れ」がある場所に、必ずしも「切れ字」があるわけではありません。

この関係は、道具(切れ字)と、その道具がもたらす結果(句切れ)と考えると分かりやすいでしょう。


句切れを使いこなすコツ

俳句を作る上で、句切れを「作る」というよりも「意識する」ことが大切です。句切れは、俳句が完成したときに自然と生まれることがほとんどです。

作者がどこに焦点を置きたいかによって、句切れの位置を工夫することができます。

  • 最初の五音を強調したいなら、初句切れを使います。
  • 五・七音で情景を十分に描き、最後の五音で感想や余韻を与えたいなら、二句切れを使います。
  • 句全体で一つの流れるような情景を描きたいなら、句切れをあえて作らない選択もできます。

句切れは、俳句の表現に深みとリズムを与えるための大切な道具です。これらの知識を活かして、ぜひ自分だけの俳句を作ってみてください。




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