「月の水」とは
夜空に浮かぶ月は、俳句の世界でも多くの人々を魅了してきました。そんな月の季語の中に、少し不思議な言葉があります。秋の天文の季語「月の水(つきのみず)」です。
歳時記によっては、「月の水」を「月影を水の泡に見立てたもの」と説明しています。 1)
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「月の水」のイメージは難しい
「月の水」と聞くと、多くの人が月面にある氷や、SF映画に出てくる月面の水を思い浮かべるかもしれません。しかし、この季語が指すのは、水面や地表に映る月の光、「月影(つきかげ)」のことだと言います。
そして、その月影を「水の泡」に見立てる、という説明には、私たち現代人には想像しにくい、独特な感覚があります。
なぜ「水の泡」なのか?
この季語が生まれた背景には、水面に映った月影が、揺らめいては消えていく「水の泡」のように儚く、移ろいやすいものだと感じた、昔の人々の繊細な感性があるのかもしれません。
言葉の力を借りて、その情景を想像してみましょう。
- 水面に映る、揺らめく月の光
- その光が、風や波紋で砕け、無数の小さな光の粒(=水の泡)となっては消えていく
このような比喩表現は、言葉が持つ力だけで情景を伝えるため、俳句で使うには、非常に高い表現力が求められます。
単に「月の水」とだけ詠んでも、読者にはその意図が伝わりにくいためです。
あなたの感性で言葉と向き合う
季語の中には、「月の水」のように、その言葉だけでは意味を読み解くのが難しいものが存在します。しかし、それは決して「使ってはいけない季語」ではありません。
むしろ、その言葉の持つ謎を解き明かすことで、あなたの俳句はより奥深いものになるでしょう。
「月の水」という季語を使う際、自分自身の感性で、その言葉に新しい命を吹き込んでみるのはどうでしょうか。
- 月影を水の泡に見立てる
- それとも、自分だけの新しい比喩を見つける
季語のルールに縛られず、言葉と向き合うことで、あなたの俳句はさらに輝きを増すはずです。
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参考資料
1)日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.
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