俳句の季語を調べていると、普段あまり耳にしない言葉に出会うことがあります。
今回は、そんな季語の中から、ちょっと珍しい「たかみそぎ」について一緒に探求してみましょう。
「たかみそぎ」の正体を探る
「たかみそぎ」は、夏の季語である「名越の祓(なごしのはらえ)」の関連季語として、歳時記に掲載されています。
名越の祓とは、旧暦の6月末日に行われる、半年間の罪や穢(けが)れを清める神事のこと。現在でも多くの神社で「夏越の祓」として行われていますね。
しかし、「たかみそぎ」は一般的な辞書には載っておらず、その漢字も不明なため、詳しい意味や由来は謎に包まれています。
いくつかの資料をひも解くと、どうやら「四境祭(しきょうさい)」という神事の別名として「たかみそぎ」が使われていたようです。 1)
四境祭は、都の四方の境界で疫病の侵入を防ぐために行われた祭祀で、これが民間に広まって名越の祓になった、と考えられています。 2)
また、もし「たかみそぎ」の漢字が「高禊」だとすれば、「川原に棚を作り、供物を置いて行う禊」という意味だとする辞書も存在します。 3)
「たかみそぎ」の季語としての役割
残念ながら、「たかみそぎ」が使われた俳句の例は、ほとんど見つかっていません。
しかし、この言葉は「名越の祓」と同じように、半年間の穢れを払い、心身を清めるという、夏の終わりの儀式の雰囲気を伝える力を持っています。
例句がないからこそ、あなたが「たかみそぎ」の句を詠む最初の人になるチャンスです!
俳句の世界をさらに楽しむために
季語を知ることは、季節の移り変わりをより繊細に感じることにつながります。
もし「たかみそぎ」に興味を持ったら、同じ夏の季語である「名越の祓」や、それにまつわる「茅の輪くぐり」などを調べてみるのも面白いかもしれません。季語の背景にある日本の文化や歴史を知ることで、俳句の世界がさらに深く、豊かに感じられるはずです。
季語の世界は奥深いですが、難しく考えず、まずは心に響く言葉や情景を大切に、自分だけの俳句を詠んでみましょう!
1)上伊那郡教育会.野口在色遺稿暁眠記 全.(昭和7-10).信濃毎日新聞社.
2)宗田一.祭祀の医療思想.日本医史学会.http://jshm.or.jp/journal/28-2/143-146.pdf
(参照:2024.04.09).
3)平凡社 編.(1953).大辞典第15・16巻 (シンハータキン).平凡社.
4)角川書店.(2022).新版角川俳句大歳時記.KADOKAWA.
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