秋の季語の謎!「綿初穂」はどんな綿?

「綿初穂」とは

秋の季語に、綿の実を収穫する「綿取(わたとり)」があります。
この「綿取」の関連季語として、歳時記に「綿初穂(わたはつほ)」という言葉が載っているのを目にすることがあります。 1)

しかし、「穂(ほ)」と言えば稲の穂を思い浮かべますが、アオイ科の植物である綿に「穂」はできるのでしょうか?そして、「綿初穂」とは一体何を指すのでしょうか?


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謎の季語「綿初穂」の正体

この言葉の謎を解く鍵は、「初穂(はつほ)」という言葉が持つ、特別な意味にあります。

「初穂」は、その年に初めて収穫された稲穂を指しますが、転じて、「その年に初めて収穫された初物(はつもの)を、神様や仏様に供える」という日本の古い風習を指す言葉でもあります。 

つまり、「綿初穂」は、文字通り綿に穂ができる、という意味ではなく、その年に初めて収穫された綿を、神仏に供えるという、神聖な行為や、そのために捧げられる綿そのものを指していると考えられます。

実際に、古い文献には、神社や寺に「綿初穂」を納めたという記録が残っています。2.3.4.5)

言葉に秘められた「祈り」と「感謝」

「綿初穂」という言葉を使うとき、それは単に綿を収穫する情景を詠む以上の意味を持ちます。

そこには、

  • 今年一年、無事に綿が育ってくれたことへの感謝
  • 来年も豊かな実りがありますように、という祈り

といった、昔の人々が自然に対して抱いた、深い感情が込められているのです。

野社に吹もちらぬや綿初穂

この句は、「綿初穂」という言葉を通じて、神聖な野の社に供えられた綿が、風に飛ばされることなく静かにそこにある、という情景を描き出しています。

季語を学ぶことは、言葉が持つ本来の意味だけでなく、その背景にある文化や人々の心を知ることでもあります。

あなたは「綿初穂」という言葉に、どんな祈りや感謝を込めて詠みますか?


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参考資料

1)角川書店.(2022).新版角川俳句大歳時記.KADOKAWA.
2)寺島良安.和漢三才図会巻第53−71.(明34).中外出版社
3)茨木市,茨木市教育委員会.わがまち茨木風習編.(1993).茨木市.
https://dl.ndl.go.jp/pid/898185/1/126 (参照:2024.03.27)
4)佛教史學研究. (1992).日本:佛教史學會.
5)小学館.(2003).日本国語大辞典.小学館





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