春の季語の謎!鳥交る(さかる)の漢字は正しい? 

鳥交る(さかる)とは

春の訪れとともに、鳥たちは恋の季節を迎えます。そんな情景を詠む春の季語に、「鳥交る(とりさかる)」や「鳥交む(とりつるむ)」という言葉があります。 1.2.3)

しかし、これらの漢字表記には、私たち現代人にとって少し不思議な点があります。
なぜ、「交る」と書いて「さかる」や「つるむ」と読むのでしょうか?



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「交」という漢字の不思議

「交わる」という漢字は、「まじわる」や「かわる」と読むのが一般的です。「まじる」「まじえる」「まじえる」といった意味合いで使われます。

歳時記では、動物の交尾を指す言葉として、「交る(さかる)」や「交む(つるむ)」という表記を使っていますが、一般的には、「さかる」は「盛る」、「つるむ」は「交尾む」「遊牝む」と書きます。

これは、俳句の世界で古くから使われてきた、いわば「俳句独自の言葉のルール」であると考えられます。

季語の「読み方」は伝わるか?

この「俳句独自のルール」には、少し注意が必要です。

例えば、句集などで「鳥交る」とだけ書かれていた場合、俳句に詳しくない読者は、これを「とりまじる」と読んでしまうでしょう。
そうすると、作者が伝えたかった「鳥の恋の季節」という情景は、全く違う意味に受け取られてしまいます。

大庇ゆるび末寺の鳥交る  大沢みちの

この句の作者は、鳥の交尾という生命の営みを詠んだのでしょう。しかし、「とりまじる」と読んだ場合、「末寺の鳥たちが飛び混ざっている」という、全く異なる情景が浮かび上がってしまいます。

季語は「言葉の約束事」

俳句を詠むことは、言葉の奥深さを知る旅でもあります。季語には、歴史の中で培われてきた、独特の言葉のルールや約束事が数多く存在します。

「鳥交る(さかる)」という表記も、その一つです。

この表記を使う場合は、その言葉が持つ背景や、読者にどのように伝わるかを考えることが大切です。

  • 俳句独自のルールとして割り切って使う
  • あるいは、読者に誤解されないように、読み仮名をつけるなどの工夫をする

季語を学ぶことは、言葉の探求です。季語の謎を解き明かし、言葉とどう向き合うか。その小さな探求が、あなたの俳句をさらに豊かなものにしてくれるはずです。



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参考資料

1)角川学芸出版.(2006).角川俳句大歳時記.角川書店.
2)現代俳句協会.(2004).現代俳句歳時記.学研プラス.
3)角川書店.(2019).合本俳句歳時記.KADOKAWA.




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