冬の季語の謎!北極熊がなぜ季語なのか

季語の北極熊とは

冬の季語に「熊(くま)」があります。
日本の歳時記には、ヒグマやツキノワグマといった日本の熊だけでなく、「北極熊(ほっきょくぐま)」や「白熊(しろくま)」も関連季語として載っていることがあります。1.2.3.4)

日本では野生の北極熊は生息していないのに、なぜ季語になっているのでしょうか?その理由を、季語の歴史から探ってみましょう。

季語に隠された「言葉の旅」

「熊」が初めて季語になったのは大正時代のことです。その後、歳時記が編纂されていく中で、その子季語(関連季語)は増えていきました。

1. 柳下孤村(大正4年):初めて「熊」を季語に採用。2)
2. 山本三生(昭和8年):「羆(ひぐま)」や「月輪熊(つきのわぐま)」を追加。 3)
3. 素人社書屋(昭和10年):「白熊(しろくま)」や「北極熊」を追加。 4)

日本にいないはずの北極熊が季語になったのは、この頃の歳時記がきっかけでした。

季語になった、意外な理由?

山本三生は、北極熊を季語に入れなかった理由を、「流氷に乗って千島で捕獲された例はあるが、この地方に常住しない」と述べています。3)

この文章は、逆に「日本では見られないわけではない」という事実を示し、後続の歳時記に北極熊を掲載するきっかけになったのかもしれません。
また、この頃は動物園で海外の動物が飼育され、人々の好奇心が高まっていた時代でもありました。
北極熊が、異国の冬を象徴する存在として、季語に取り入れられた可能性も考えられます。

季語の「役割」を考える

しかし、北極熊の存在は、地球温暖化によって危機に瀕しています。

もし、本当に北極熊が絶滅してしまったら、私たちは二度と野生の北極熊を詠むことができなくなります。そう考えると、「日本に生息するかどうか」というルールを越えて、今しか詠めないその存在を、季語として残していくことに意味はあるのかもしれません。

季語を選ぶことは、言葉の歴史や、時代の変化、そして未来に想いを馳せることでもあります。

あなたは、この冬、北極熊という季語にどんな想いを込めて句を詠みますか?



参考資料

1) 角川書店.(2022).新版角川俳句大歳時記.KADOKAWA.
2) 柳下孤村 編.(大正4).元禄、天明、明治時代俳句選 冬及新年の部.木太刀社.
3) 山本三生 編.(昭和8).俳諧歳時記 冬.改造社.
4) 素人社書屋 編.(昭和10).最新俳句歳事記 冬.素人社書屋.
5) BBCニュース.
https://www.bbc.com/news/science-environment-53474445 (参照:2024.04.23)





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