俳句の創造力を飛躍させる「ノート術」

その感動、3日後には消えていませんか?
「良い句を詠みたいけれど、ネタが見つからない」「いざ作ろうとすると、その時の感動を思い出せない」・・・。そんな悩みを解決するための、ノートの使い方を紹介します。

季語を見たときの感動。そのかけがえのない瞬間を取りこぼさないための、具体的で強力なノート活用術になります。



なぜ「ノート」が必要なのか?

俳句のネタを取りこぼさないためにも、外出時には必ずノートを携帯することをお勧めします。
目的は、ある季語を見た時に感じた「あれっ?」という違和感や、その場の情景を「キーワード」で残しておくことです。
「思考の書き殴り」のような感じです。ただ、この殴り書きが、家に帰ってから作品にまとめる際の貴重なヒントになります。

人の記憶は「3日」で激減する
「わざわざ書かなくても覚えている」と思う人もいるかもしれません。
ただ、人の記憶は驚くほど曖昧です。

私自身の記録
先日、紫陽花を30分観察した直後、ノートには51個のキーワードが書き残されました。
しかし3日後、記憶だけで思い出せたキーワードはわずか10個
1週間経てば、2〜3個まで減ると思います。
この「思い出すのもやっと」という状態で良い句を作るのは、かなり難しいでしょう。しかし、書き残した51個の種があれば、1ヶ月後でも鮮明に句作ができます。




40〜50個のキーワードを出す「頭の体操」

ノートを持って行ったけれど「何を書けばいいか分からない」という人もいると思いますが、難しく考えずに、まずは、そこで感じたキーワードを片っ端から書いていけば大丈夫です。

紫陽花であれば、「綺麗、青いな、真ん丸だ」など、とりあえず、その場で心に浮かんだことを書きとめます。
そんなもの俳句にならないよ、と思う人もいるかもしれませんが、俳句にできます。俳句にする方法は、後で解説します。

一般的には確かに「綺麗、青いな、真ん丸だ」といった直感的な感想は、俳句になりづらいとは言われます。ただ、私が感じるのは、最初の直感というのは、自分自身のみずみずしい感覚といえます。
家に帰って、「よし、良い俳句を作るぞ。どんな言葉を使ってやろうか。」などと考えて出す言葉より、何百倍も良い言葉だと私は思います。

見た瞬間にパッと感じたことを書き留めますが、やはり書けない、という人のために、目の前の季語から大量の感じたことやキーワード(俳句の種)を引き出すコツを紹介します。

【褒める・ツッコむ】
目の前の季語を見て、徹底的に褒めちぎる。これで、普段見過ごしている美点が見つかります。
視点を180度変え、徹底的にツッコむ。これで、季語に対する「違和感」や新発見が浮き彫りになります。
この方法で、かなり多くのキーワードが書けるはずです。
また、次の方法も有効です。

【「なぜそう思ったか」を追求する】
例えば雷を聞いて「怖い」と思ったら、「なぜ怖いと感じたのか?」という理由を考え、思い浮かんだキーワードを書き留めます。
感情を引き起こした「理由」で俳句を作ることは、読者に同じ感情を追体験させることにつながります。

発想力を高める本

ちなみに、季語をみて「褒める・ツッコむ」は、お笑いの吉本芸人の、発想を豊かにするためのトレーニング方法として、下記の本に紹介されていたものです。
俳句の発想力を高めるために、お笑い芸人のはどうやって発想力を鍛えているのだろう?と考えていた時に出会った本です。

1秒で答えをつくる力 お笑い芸人が学ぶ「切り返し」のプロになる48の技術
本多 正識/著
ダイヤモンド社

ほかにも48の発想方法が書かれていて、俳句の発想法にも効果的だと思います。

私自身、発想力を高められないだろうかと思い、以下のいろいろな本を読んできました。
興味のある方は、読まれると良いと思いますが、私はそれらの中で一番「褒める・ツッコむ」が、やりやすくて今でも続けられているので、ここで紹介しました。

アイデアのつくり方 , ジェームス W.ヤング (著)
アイデアのつくり方を「仕組み化」する , ポール・バーチ (著)
妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方 , 暦本 純一 (著)
アイデアのヒント , ジャック フォスター (著)
「面白い!」を見つける ――物事の見え方が変わる発想法 , 林 雄司 (著)
発想力を鍛える 33の思考実験 , 北村 良子 (著)







ノートが脳を「考える場所」に変える

季語を見てノートに書くと説明しましたが、この理由は、俳句を作るときに大きなメリットを生みます。

脳のメモリを100%句作に使う
ノートにキーワードがあれば、脳を「思い出す作業」から解放し、「考える場所」として集中させることができます。

具体性が増す: 目の前に具体的なキーワードがあるため、作る句が具体的になります。
軸がぶれない: 五・七・五にまとめている最中、作業に意識が向いて「何を詠もうとしていたか」を忘れてしまうことがありますが、ノートのキーワードを見ていれば「詠むべき要」が常に確認できるため、軸のぶれない俳句作りができます。

アイデアの連鎖
残したキーワードの一つをテーマに据え、そこから連想を広げることで、それがそのまま新しい俳句のアイデアにすることもできます。

このような理由があるため、外出時に、私は常にノートをもって出歩きます。

平凡なキーワードを「自分独自の視点」へ昇華させる

ノートに書き残したキーワードで、実際に俳句を作ることになりますが、そのときのコツを紹介します。
紫陽花を見て
「雨に濡れてキレイ」といった平凡なキーワードしか出なかった場合。それを、そのまま俳句にしても、良い俳句にはなりませんが、次の視点を加えることで、俳句がよりよくなります。

【常識を言い換える】
当たり前の常識を、別の角度から表現します。
「紫陽花は雨でキレイ」→ 「紫陽花は、雨を待ち遠しくさせるもの」
「紫陽花は真ん丸だ」→ 「紫陽花は、星の丸さだ」

【「なぜ?」「どのように?」で深掘りする】
平凡な言葉に、さらに問いを立てます。
「紫陽花は雨でキレイ」→ 「なぜキレイだと感じた?」「どのようにキレイ?」
「紫陽花は青空色」→ 「どのような青空色?」
このように深掘りをした問いを立て、出た答えで俳句を作ります。
そうすることで、より具体的で、読者の脳裏に浮かびやすい俳句になります。


常識を言い換える。「なぜ?」「どのように?」で深掘りする。
最初は難しく感じるかもしれませんが、何度もやっていると、慣れて出来るようになるので、頑張ってください。


お勧めのノート選び

道具選びも創作意欲に関わります。以下のポイントを参考にしてください。

サイズ: 持ち運びやすいポケットサイズでありつつ、手の平より少し大きめが書きやすいです。
避けるべきもの: 針金による中綴じ(ツインリング)ノート。手が当たって書きづらいため、お勧めしません。

使い慣れているのであれば、スマホのノートアプリでも良いと思います。



私が「ノート術」にたどり着くまで

実は、私がノートを本格的に使い始めたのは、つい最近のことです。
きっかけは、もっと「思考力」を高め、豊かなアイデアを生み出す方法はないかと模索していた時に出会った2冊の本でした。

上田正仁 著『東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方
前田裕二 著『メモの魔力』


ジャンルは違えど、お二人に共通していたのは「ふと思いついたことを、その瞬間に書き残すこと」の圧倒的な重要性でした。
どちらの著者も、アイデアを得るために「思いついたことを絶対にメモに取るべきだ」と強く勧めていて、「それなら自分も」と、俳句の発想を得るために実践してみることにしました。

実際にやってみた結果は、想像以上でした。このブログでも書きましたが、俳句の種が圧倒的に増え、俳句作りも、俳句の中心をぶれずに作れるようになったのです。
そして確信したのは、俳句作りにおいても「その場で一句完成させようとするより、キーワードを書き殴るほうが、圧倒的に創作の質が高まる」ということでした。

「5分の作句」より「1つでも多くの観察」を
昔の私は、何かを見つけるとその場でノートを開き、必死に五・七・五を組み立てていました。
これは、感動が新鮮なうちに詠んだ方が、新鮮な俳句が作れると思っていたからです。
しかし、これだと最低でも一作品に4〜5分は頭を悩ませることになります。
実は、この「悩んでいる時間」がもったいなかったのです。

その4〜5分の間、指を動かして考え込む代わりに、目の前の光景をさらに深く観察し、五感で感じたこと(キーワード)を一つでも多く書き残してみてください。
「風が吹いて、どう感じたか?」
「その光景を見て、なぜ心が動いたのか?」
現場で「言葉の種」をたくさん収穫しておけば、後で机に向かって句作をする際に、それらが何倍もの価値を持ってあなたを助けてくれます。

脳を「思い出す作業」から解放し、100%「考えること」に集中させる
これこそが、思いついた趣向を紙に書きとどめておく「ノート術」の真意です。

今回紹介した方法が、あなたの俳句作りの参考になれば幸いです。
何か不明な点などあれば、気軽にコメントを残してください。必ず返答します。




本の紹介
今回、私にヒントをくれた本は、こちらです。
仕事でも参考になる本ですので、お勧めです。

東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方 想定外の時代を生き抜くためのヒント
著者名    上田 正仁
出版者    ブックマン社
出版年月              2013.7

メモの魔力
著者名    前田 裕二
出版者    幻冬舎
出版年月              2018.12









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