俳句の『有季定型』とは

「五・七・五」の短い言葉の中に、深い情景や感情を込める俳句。
俳句の世界には、「有季定型」という言葉があります。
俳句をうまく作るための、要となる大切なルールです。
ここでは、そんな「有季定型」について解説をしていきたいと思います。

有季定型の読み方

「有季定型」は「ゆうきていけい」と読みます。
これは、俳句を作る上で最も基本的なルールであり、日本の伝統的な詩の形式を理解する上で非常に重要な言葉です。


俳句の有季定型とは

俳句の「有季定型」とは、「季語を入れること(有季)」と「五・七・五の音数律を守ること(定型)」という、二つの約束事を指します。

この二つのルールは、日本の短い詩である俳句が、古くから多くの人々に愛され、受け継がれてきた理由の一つです。
有季定型を守ることで、限られた短い言葉の中に、季節の移ろいや情景、そして作者の感動を豊かに表現することができます。


有季定型の例

有季定型で作られた有名な俳句をいくつかご紹介します。

古池や 蛙飛び込む 水の音  松尾芭蕉
(ふるいけや かわづとびこむ みずのおと)

この句では「蛙(かわづ)」が春の季語です。「五・七・五」の音数律も守られています。これが「有季定型」です。
静寂な古池に、春の訪れを知らせるかのように飛び込む蛙の音が響く情景が目に浮かびます。

柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺   正岡子規
(かきくえば かねがなるなり ほうりゅうじ)

「柿」は秋の季語です。「五・七・五」の音数律も守られています。
柿を食べていると、どこからともなく法隆寺の鐘の音が聞こえてくる、のどかな秋の情景が目に浮かびます。



有季定型の反対

「有季定型」の反対の言葉はありませんが、「有季」の反対は「無季」。「定型」の反対は「自由律」という言葉が使われます。そのため、「自由律俳句」が「有季定型俳句」の反対と意識されることがあります。

無季(むき)
季語を含まない俳句のこと。現代では、季語に縛られず、自由なテーマで俳句を作る人も増えています。

自由律(じゆうりつ)
五・七・五の音数律にとらわれず、自由に字数を変えて作る俳句のこと。


これらの俳句は、有季定型の俳句とは異なる魅力を持っていますが、まずは有季定型のルールを学ぶことが、俳句の世界を深く理解する第一歩となります。

自由律俳句については、こちらでも記事にしています。




有季定型のメリット

俳句初心者にとって、有季定型で俳句を作ることは、多くのメリットがあります。

作りやすい
五・七・五の定型があることで、字数を気にしながら作ることができます。

伝えるべき内容が明確になる
「季語」というテーマを決めることで、表現するべき内容が明確になります。

読み手に情景が伝わりやすい
季語には、その季節の情景や文化が凝縮されています。そのため、読み手は季語から多くのイメージを膨らませ、作者の意図をより深く理解できます。

まずは有季定型のルールで俳句を作り、その奥深い世界を楽しんでみてください。

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有季定型という言葉が使われる場面

俳句大会の募集要項には、「有季定型でご応募ください」と書かれていることがよくあります。これは、「季語を一つ入れて、五・七・五の音数で作ってください」という意味です。

また、「有季定型」のルールを重んじる結社や句会では、新しく参加した人に「うちは有季定型を基本としています」と説明されることがあります。これは、その結社や句会が、伝統的な俳句の形式を大切にしていることを示しています。





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